印象に残った言葉 2016年版

印象に残った言葉 2016年版

「だまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになつてしまつていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。このことは、過去の日本が、外国の力なしには封建制度も鎖国制度も独力で打破することができなかつた事実、個人の基本的人権さえも自力でつかみ得なかつた事実とまつたくその本質を等しくするものである。そして、このことはまた、同時にあのような専横と圧制を支配者にゆるした国民の奴隷根性とも密接につながるものである。それは少なくとも個人の尊厳の冒涜ぼうとく、すなわち自我の放棄であり人間性への裏切りである。また、悪を憤る精神の欠如であり、道徳的無感覚である。ひいては国民大衆、すなわち被支配階級全体に対する不忠である。」(「戦争責任者の問題」より伊丹万作氏)
「ナチスが共産党員を連れていった時、私は何も言いませんでした。私は共産党員ではありませんでしたから。ナチスが社会民主党員を投獄した時、私は何も言いませんでした。私は社会民主党員ではありませんでしたから。ナチスがカトリック教徒を連れていった時、私は抗議しませんでした。私はカトリック教徒ではなかったからです。ナチスが私を連れていこうとした時、抗議してくれる人はもう誰もいませんでした」(マルティン=ニーメラー牧師)
「支配者の側にあるものが、その被支配の民族にたいして、人間はそれぞれに独立的なものだなどといっているとすれば、それははっきりと偽善です」(「太白山脈」より金達寿氏)
「人間が創る芸術のなかでも、ファンタジーは特に言葉、つまり本来言葉の芸術である文学にゆだねるのがもっともよい。たとえば絵画だと、心に描いた不思議なイメージを視覚的に表現するのはかんたんすぎる。手が先走って心に勝ったりするのである」(「妖精物語の国へ」よりジョン・ロナルド・ロウエル=トールキン教授)
「“歴史”は抹殺できるが“記憶”は抹殺できない」(「悲劇の島 チェジュ(済州)」より金石範氏)
「椎名さんは… 死刑賛成論者でしたね 僕は そんな はっきりした意見などないんです 元々 人の考えなんて 自分の考えなんて はっきりしたもんじゃないと 思うんです 被害者にかかわれば 被害者の気持ちに賛同し 加害者にかかわれば また情のようなものが湧く それが人情ですし 人間だと 一つの物事には多様な側面がある 僕は その一つを選び 自分の意見だなどと あなたのようには 決められないんです きっと そういう人間の方が 世の中には多い ただ人が死ぬのは嫌だなあ と思うだけです それは そんなに いけないこと でしょうか?」(「死刑囚042」より笹塚)
「……愛国心の押売りをする奴に愛国者がいたためしはないんですが」「そりゃそうだ。国に実益をもたらす何事をもなし得ないから、ことばだけ威勢のいい愛国心を売って歩くのでね」(「戦争と人間」より高畠と伍代由介)
「あの世に地獄などない。地獄はこの世の人間の憎しみや恐れが作り出したものだ」(「蝶の舌」よりドン・グレゴリオ先生)
「にほんのひのまる なだてあかい かえらぬ おらがむすこの ちであかい」(木村迪男)

(了)

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