銀幕のメモワール

銀幕のメモワール

フランス、2001年
監督:ピエール=グランブラ
出演:リザ(ジャンヌ=モロー)、サム(ブノワ=マジメル)、若き日のリザ(マリオン=コティヤール)、シルヴァン(サガモア=ステヴナン)、ほか
見たところ:シネリーブル池袋

 第2次世界大戦中のドイツ占領下のフランスで起った悲恋物と現代にもなおその傷痕を残した物語。お涙ちょうだいのラブロマンスを期待していると外します。もっと冷静に過去と現代を見つめ直した、これは骨太な物語です。

 若い映画監督のサムは、戦中のスターを題材にドキュメンタリー映画を撮ろうと考え、その1人目に戦争中に行方不明になった二枚目俳優シルヴァンを選ぶ。彼の最後の出演作となった「女王マリューシュカ」のフィルム・ケースの中からシルヴァンと若い女性のスナップ写真が見つかり、裏に書かれたリザという名を手がかりに、サムはシルヴァンのことを知っているであろうリザを探す。やっと見つけたリザは、最初はその名を偽ろうとするが、見抜いたサムにシルヴァンとの出逢い、恋、別れをうち明ける。大戦中、ドイツの占領下にあったフランスでは今もその時に受けた心の傷を引きずっている人びとがいた。リザばかりでなく、自分の両親もその一人であり、父が癌で余命いくばくもないことを知ったサムは、次の映画で父を撮ろうと思うのだった。

思い出にのみ生きるリザを、フランスの大女優ジャンヌ=モローさんが好演。若い頃の情熱的なリザとは違って、しっとりとした大人の雰囲気。最愛の人シルヴァンを失ったリザが、どんな思いと時代を乗り越えて「たとえ死が2人を別つとも、思い出だけは奪えはしない」と言えるようになったのか、想像を絶するものがあります。そしてサムの両親が幼くして戦災孤児になり、2人で支え合って生きてきたというエピソードは、リザの話もフランスでは決して特別なものではないのだと思えるのでした。この両親が短い出番ながらも好演で、うらやましいご夫婦でした。

戦勝国でありながら、ドイツの占領下が長く、ナチ・シンパへの私刑も見られたフランスの傷痕を見せてくれる、上質の映画でございます。

(了)

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