ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(字幕スーパー版)

ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(字幕スーパー版)

アメリカ、2002年
監督:ピーター=ジャクソン
出演:フロド(イライジャ=ウッド)、サム(ショーン=アスティン)、ガンダルフ(イアン=マッケラン)、アラゴルン(ヴィゴ=モーテンセン)、レゴラス(オーランド=ブルーム)、ギムリ(ジョン・リス=デイヴィス)、メリー(ドミニク=モナハン)、ピピン(ビリー=ボイド)、ファラミア(デイビッド=ウェンハム)、エオウィン()、他
音楽:ハワード=ショア
見たところ:厚木シネマミロード

 今年のワースト。まだ9ヶ月も残ってるのにそんなこと言っていいのかと思いつつ、映画見てこれほど腹が立ったのも久し振りなので、言いたいことは言わせてもらうぞ。すみません。今回、1つも褒めてないんで、そこらへん了承の上、お読みくださいませ。

原作と映画を比較することに愚があるのは百も承知で言わせてもらえば、原作をねじ曲げてまでの感動を押しつけるような演出に感動すると思ってんのか? ということです。

蛇の舌(=サルーマンでもあるのだが)の呪縛から解き放たれたセオデン王が、辺境国の王らしからぬ、いつまでもいじいじしているような、降りかかる火の粉も振り払えないようなただのじいさんに見えたのはたきがはだけか? ガンダルフの来訪によってセオデン王は辺境国の王として、勇敢に立ち上がったのだ。たとえ相手がどんな強敵であろうとも、たとえ絶望しかないように見えても、ローハンの誇りを取り戻し、初代王エオルが、ゴンドール(ボロミアの故国)と交わした盟約に則って、セオデン王は勇ましく戦いに赴いたんだぞ。なんや、あのセオデン王は? あんな王様に従って、ローハンの騎士が長征するのか? だれもが指輪所持者(フロド)にただ一点の望みをかけている絶望的な戦いに行くのか? メリーがホビットの誇りと愛情を捧げたのは、あんなセオデン王ではないやい。

アラゴルンの崖からの転落って意味ないんじゃないですか? そうまでしてアルウェンを出す必要があるのか? あんなところに時間かけるなら、もっと描くべきところがあるんじゃないですか? 時間の無駄だと思うんですけど。あんなシーンがなくても、レゴラスやギムリとの友情になにか問題あるんですか?

フロドをオスギリアスに連れていくのはすごーく遠回りじゃないですか? 地図見てるか? 本来のファラミアたちの隠れ場所からオスギリアスって、ホビット庄から粥村ぐらい離れているんですけど。しかもああも堂々とゴクリを人目にさらしてしまったら、ゴンドールの人たちのあいだに一つの指輪の噂やらなにやらかにやら轟々と巻き起こると思うんですけど、ファラミアはあんなことはしなかったですよ? アラゴルンに勝るとも劣らぬ人格者であるファラミアを、あんな風に貶めた落とし前はどうつけていただけるんでしょうね? 「あなたがお父上に殺されます」「それも承知の上だ」なんて会話ぐらいでごまかせるとは思ってないでしょうね? 「人も獣も従わせられる」ファラミアを、この後どう描くんですか? たきがはすごく興味があります。

品格以前にエルロンドの人格をそこまで落とした責任もちゃんと果たしてもらいたいですね。指輪戦争の真っ最中に自分たち(裂け谷のエルフたち)だけ勝手に逃げ出すような輩ではありませんよ、エルロンドは。だいたい裂け谷にはビルボがいるんですよ。フロドの養父、先代の指輪所持者。ビルボを置いて、あんたらどこに逃げようっていうんですか? フロドもサムもメリーもピピンもガンダルフもアラゴルンも、みんなビルボのことを心配してるし、大好きなんですよ。そんな無責任な輩にビルボを預けたと思ってるんですか?

ローハンにロリエンのハルディアたちがやってきたのはなんでですか? そんな余裕がロリエンにあると思ってるんですか? 指輪戦争がローハンやゴンドールの周辺でしか起きてないと思ってるわけではないですよね? レゴラスの出身はロリエンの東にある闇の森です。ギムリはその北にある離れ山です。二人の種族が二人を代表に送り込んだのは、そっちにも冥王サウロンの攻撃が及んでいたからですよ。ロリエンだって無事じゃないんですよ。しかもハルディア殺しちゃって、そんなことしていいと思ってるんですか?

メリーの機転はわからなくもありませんが、二人のホビットを最初、オークと間違えて殺そうとしたほどオークを憎んでいるエントが、指輪戦争に「わしらは関係ない」と言って参戦しないと思ってるんですか? エントはそんなに世界のことに無関心ではいませんよ。彼らはどんぐりの頃から知っている木を気にかけているし、彼らなりの愛情で世界が好きなんですよ。前回でも今回でも、オルサンク(サルーマンの拠点)ではさんざん木を引っこ抜き、焼き払うというシーンを何回も見せてくれてますけど、そのことを知ったエントたちが黙っていると思ったんですか? その実情を見るまでホビットたちの話もわからないようなぼけなすだとでも思ってるんですか?

やっぱりフロド弱すぎます。ラスト、ファラミアに説教しちゃうサムは、サム・ファンとしてはもう感涙もので、うるうるしながら「サム格好いいぞー!!」と思って見てましたが、どうもサム出しゃばりすぎの感じです。サムは庭師であり、フロドの旦那あってのサムですから、分をわきまえているホビットです。ああいう知的なところはやはりフロドがするべきであり、それでこその指輪所持者であるのだと思います。このままではフロドはたまたま一つの指輪の所持者になってしまっただけの弱いホビットでしかないです。主人公としての存在意義がたきがはのなかではなくなりかけています。ホビットは可愛いだけの存在ではありません。土壇場ではあのガンダルフをして驚かす存在なのです。まさに一つの指輪はそれだからこそ、優美なエルフでも、頑強なドワーフでも、知恵の働く人間でもなく、素朴なホビットの手に渡ったのです。フロドはそのホビットなのに、とてもそうは見えないですよ。サムがフロドの役まで果たしちゃいけませんがな。それはサムではありません。

飛蔭、ただの白い馬じゃん。馬の王様ってほどの威厳はどこへ? きれいなだけの馬じゃないですよ。アラゴルンにも比する、王のなかの王が飛蔭なのよ。

エオウィン役、納得いかねー。細いけれど鋼のような強靱さを秘めたローハンの誇り高き姫君はいったいどこいったんじゃー? セオデン王もああだし、とてもたきがはの大好きなあのシーンは期待できるような演出じゃないだろーなー。

今回、半端なところで切りましたね。フロド組はともかく、ガンダルフ・アラゴルン組はもっと先まで進めた方が良かったのでわ? あ! まさか、指輪戦争の最終章をぶっちぎるつもりではないだろうな。それともモルドール編をはしょるのかな?

DVDとかには、劇場公開版では切られたシーンがいくつか入っているそうです。ギムリのあーんなシーンや、メリーやピピンのこーんなシーンとか、DVDでは見られるんだそうです。制作会社の方針で3時間を超えたらいけないんだそうです。「それ以上フィルムを切るなら縦に切れ」それぐらいの気合い入れて公開せんかい。半端に手を出すなら、最初から作るな

(了)

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