「機動武闘伝Gガンダム」今川泰宏総監督、Gガンダムを語る! 第4回

「機動武闘伝Gガンダム」今川泰宏総監督、Gガンダムを語る! 第4回

本当はウォン・ユンファじゃなくて、チョウ・ユンファって名前にしたいぐらいだったんです(笑)。

−−−第3回で聞き忘れてしまった事なんですが、24話でネオ香港へ向かうゴッドガンダムを妨害する四天王。あの時の風雲再起にはマスターガンダムがちゃんと乗っているのでは?
乗ってます。作画にもあるはず。今ここで断言しちゃって、LDをコマ送りで見たときに無かったら大変なことだけど(笑)。風雲再起がゴッドガンダムにぶつかるときに見えるはずなんですよ。
−−−たしかめてみたんですけど、風雲再起の背中に黒い固まりらしき物が見えるんですよ。ただ、これが人型をしたものかどうかというと…。
DG細胞での再生中だって(笑)。あそこは凄く巧いアニメーターさんに熱入れて描いてもらったところで、私も凄く好きなシーンなんですよ。四天王は風雲再起を入れると5つになっちゃいますけど、46話でドモンが乗り換えるまでは、マスターガンダムと風雲再起は併せてひとつっていう考え方なんです。風雲再起が見えたらマスターもそこにいると思って欲しいってことなんですよ。サポートメカって言うのは全て、併せて一機っていう前提としています。ただ、それ以降を見てもらえれば分かってもらえると思うんですよね。
−−−さらに関連することなんですけど、あそこで出てきたウォルターガンダムは本物なんですか? だとしたら誰が乗ってるんでしょう?
あれは正真正銘のウォルターガンダムです。25話以降に出てくるネロスガンダムやジョンブルガンダムは四天王が変型したものなんですよ。だから48話でノーベルガンダムが再び出てくるのも問題ないんですよね。
−−−じゃあ、誰も乗ってないんですね?
そうそう。まあ、あそこで出てくるガンダムヘブンズソードとグランドガンダムにも人は乗ってないと考えてくれても構わないんです。ファイターは既にネオ香港に入ってるんだと。さらにマスターはチャップマンをいつ生き返らせたのか。ミケロをいつ刑務所から脱獄または釈放させたのか。だとすれば、チャップマンもミケロもマスターと一緒にギアナ高地に来てたのかってことになりますよね。そういう解釈は僕自身もってないんですよ。マスターとしては先を予見して、ドモンの修行中にミケロやチャップマンを仲間に引き入れて、ネオ香港での行動がしやすいように送り込んでおいた。だからあのシーンはマスターが無人の三つの四天王を従えてドモンを攻撃したっていう解釈でもいいんです。ただ、あのシーンのイメージがあるんでね。ミケロやチャップマンが襲ってきたんだって思ってほしい面もあるんですよ。ひとつ言えるのは、四天王が変型してそれぞれに化けていたってことは事実ですね。
−−−25話からウォン・ユンファが登場します。単純に考えてウォン・フェイフォンとチョウ・ユンファの名前を併せ持つ男が何故悪役なんでしょう? 絵的なモデルは「ゴッドギャンブラー」のチョウ・ユンファですよねえ?
チョコレートをよく食べるっていうのは「ゴッドギャンブラー*1」ですね。ちょっと徹底しきれなかったところはあるんですけどね。もっとキャラクターの性格描写として使いたかった。一度だけ私のチェック漏れでワインを飲んでるところがあったんですよ。それと、あの服装。コートに丸サングラスというのは私の冬の格好です(笑)。
ウォンのキャラクター設定を考えたときに、シナリオを読んだ段階でもネオ香港の首相が出てくるっていうと、みんなジジイというか、腹黒そうな大臣を想像したようなんですよ。でもジジイにジジイを絡ませても、あまりに典型的過ぎてつまらない。ここは意外性を持たせるためにも、まあ、マスターがああなんでね(笑)。無茶苦茶な人物は出せないんですよ。マスターと組んだときに面白い人物って考えたときにウォン・ユンファのようなキャラクターを出したんです。
名前をつける時に、まず中国系の香港人の典型的な名前には走りたくない。難しすぎず、ありそうなところから取って来たんです。実はね、私の好きなマンガで森川久実さんの「南京路に花吹雪」と「蘇州夜曲」というマンガに登場するアンチ・ヒーロー的な人物がいて、ウォンの優男的なイメージはそこから取ってるんですよ。ユンファっていうのは、私実はチョウ・ユンファ大っ好き(笑)なんですよ。キャラクターとして何がやりたかったのかというと、チョウ・ユンファのカッコ良さであり、笑ったときの日本人とは違った童顔さ。童顔っていうのは顔だけじゃなく、仕草や性格に幼さを残したいなあと思ったんですよ。最初にスタッフみんなに言ったときに誤解を受けた部分もあるんですが、幼児性を持った芝居をするのではなく、幼児性を持った性格から来る感情表現を何かの形に出来ないかなと思ったんです。例えば「ゴッドギャンブラー」のチョウ・ユンファは、記憶喪失で本当に幼児退行している役なんです。この中で相棒役のアンディ・ラウとの間に、非常に心暖まる友情話があるんです。男の友情といえば熱くて、闘ってる得る友情みたいなものですけど、ここではまさに幼児性の、人情の部分で語ってくれるわけなんですよ。それで、ウォン・ユンファに幼児性から来る感情表現をやらせてみたいと思ったんです。
Gガンダムの中では、僕が今まで絶対にやらなかった、やりたくなかった事を敢えてやろうというのがあったんです。それは露骨な頂きものというかね。東方不敗という名前もそうだし、普段だったら同じようなことでも自分で考えられるかも知れない。しかし、頂いてつけたものでも同じインパクトを与えられる自信はあるんでね。今回はマニアックで自己満足的な遊びというものをやってみようと。本当はウォン・ユンファじゃなくて、チョウ・ユンファって名前にしたいぐらいだったんですけど(笑)、ちょっと露骨すぎるんでね…。
−−−そういえば、ネオ香港のコロニーって一度も登場してないですよね?
たしかに登場していません。実はネオ香港はコロニーを持っていないんです。最初の頃は、この第13回大会でもう一度優勝して宇宙進出を計ろうとしていたんだ、と考えていたんですよ。
−−−それなら、ネオホンコンの国民が地球に残された他国民と違って卑屈なところがないのも理解出来ます。もちろん、国民性というのもあるだろうし…。
そうそう。国民性で描きたかった部分っていうのはあるんですよ。さらにネオ香港の人々は地上に居ることをむしろ誇りにしている国なんだと。
その前に、何故あんな人が首相なのかっていう疑問がありますよね。実は、あの衰退した地球の中で唯一コロニー並にネオ香港を繁栄させたのがウォンなんだと。それは経済政策なのかもしれない、行政指導なのかもしれない。あらゆる面でネオ香港という国をあそこまで建て直したのがウォン・ユンファなんですよ。
例えばこのLDの解説の中で裏設定的なこと、本編の中で描けなくて、そのままにしてあることを、僕にしてみれば仮の補足みたいな事をしていると思うんです。下手すると言い訳にも読めちゃうと思うんですよ(笑)。世界や設定を引っ掻き回すつもりはないんです。こういうことを考えて見れば面白いんじゃないかなっていう提案でしかないと思うんです。
−−−飽くまでも監督の発言は仮の補足という事ですね。それでは、ネオ香港編に入って1話のみのゲストキャラクターが多く登場するようになりますが、彼にもシリーズ初期のような背景設定はあるのですか?
彼らがどんな人生を歩んで来たかという設定ならほとんど無いです。キャラクター性に関しては奇人変人大集合だと(笑)。私はそういうのが大好きなんでね。対決物の面白さっていうのは、主人公のスタンダードな強さに対して、どんなインパクトのある敵がやってくるか。主人公が自分にないものを持った強大な敵をどうやって打ち破るか。Gガンダムはスポコン物じゃないですから。スポコン物っていうのは、一話完結ではなく、主人公の長い年月を重ねて描く成長物だと思うんですよ。対決物の場合、主人公に違う個性をぶつけないと、面白さにならないと思うんです。それに、一つのキャラクターのドラマを作り上げるというのは、前半11話まででやってきたことの繰り返しになってしまう。それでは意味が無い。内容的にも完全に路線変更してますからね。もちろんドラマを捨てるわけではないんです。ドラマをどちら側に置くかですよね。今度はドラマの中心をドモンにすることで一話完結の対決物のストレートな面白さを狙っているんです。ただこの場合、30分の中での比重でいうと敵側が少なくなってしまいます。それを補うためにもキャラクターの面白さで押してみようということなんですよ。
−−−マーキロットやシジーマはそうとして、ハンスやキラルの場合は?
あの辺は逆に前半のラインを復活させられる部分なんですよ。必ずしも11話までの方法を否定するのではなく、ものによってはそれまでのスタイルをもってくることが出来るんです。29話の場合はサイ・サイシーというキャラクターが、ドモン同様に少しずつ積み上げて来ているキャラクターだから、ハンス達のほうに量を置くことが出来るんです。その分量の配分がうまくいったなと思ってます。サイ・サイシーの積み上げてきたキャラクター性を開花させられる瞬間、その力を敵のハンスに持ってくるんだと。だから開くほうの力もたっぷり描けるし、開く瞬間もたっぷり描けるんですよ。もちろん、そのうえにはセシルという可愛いキャラクターもあってのことですよね。セシルのキャラクターとしての重要性も、もちろんあるし。逆にサイ・サイシーが自分の力で自分を開花させるというのが36話なんですよ。
この話っていうのは中盤では凄く好きな話で、ちょうど香港取材兼レコーディングで向こうに行ったときにやってた話なんですよ。行くまでにAパート上げて、後は飛行機の中でやってたんですよ。ちょっとだけなんだけどね(笑)。ただ、いいところが書けたなっていうのが、サイ・サイシーが後半、港でしょんぼりしてるときにね「こんなに暑かったら仕事でけへんわあ」っていうあの三バカ。あのシーンっていうのはシナリオではなかったんです。別になくてもいいシーンなんだけど、ただ絵コンテにしたときに、セシルが「私、捜して来る」って行ったあと。セシルがサイ・サイシーのところに来るまでに、カットがひとつか、ふたつしかないんですよ。シナリオを否定するわけじゃないんですよ。これを、絵コンテにしたときにフィルム上の不備に見えてしまうんですよ。時間的にそんなに簡単に見つかってしまうんじゃ、ドラマチックに見えない。瑞山、恵雲は何をしていたんだと思われてしまう。どうしても何かが欲しい。そのときフッと思ったのが、あの三バカなんですよ。あの三バカに一回でも振っておけば、時間的な経過を自然に持たせられる。それで、あのシーンは成り立ったかなと思ってます。また、サイ・サイシーの見た目線にあったのが、あの三バカの居た場所だったんです。香港でロケハンして、実際にサイ・サイシーの視線で見たあとなので、それを即効で設定出来た。これぞ本当のロケハンの効果だなって感じましたね。
色々と頭の中が香港しているときだったんで、非常に楽しく描けましたね(笑)。あのマーメイドガンダムの話に関してはシナリオの段階からいろんな苦労と、いろんな面白い話がありましたね。結果あれで凄く良かったと思ってます。香港編が始まってみんなが全員楽しんで作ってみた話でしたね。とにかく感動したのがサイ・サイシーが料理作ってる屋台っていうか、店。あれは本当にあるんですが、よく出来たなっていうね。
Gガンダムの場合は背景さんが特に頑張ってくれていて、背景が持ってるシーンっていうのがいっぱいあるんですよ。あの場所がうまく描けたことで、これは見事に香港が描けたなって思いましたね。行って見てきた人間があの場所を思い出せる絵になってるんですよ。背景的にテレビシリーズで香港を舞台にするのは物凄い自殺行為なんです。だって、あの看板の数といったら…。画量の多い場所は大変なんですよ。その中でよく背景さんがあそこまで描いてくれているなあって思うんですよ。だからリングのある場所っていうのは逆に閑散な場所に持っていってるんです。クインズ・ロード・イースト・リングなんかはナイター用なんですけど、香港の看板を照明代わりにっていうね。これもあって31話のジェスターガンダムの話っていうのも大好きなんですよ。シリーズとおしたときにチボデーって、ちょっとキャラクターとしての強さがあやふやになってしまった印象があるんですが、この31話のチボデーに関しては、もう大塚さんの演技のおかげでね。後半の部分でも何回か違うテイクを録ってるんですが、どれも凄くイイ。ジェスターガンダムを倒した後の「もう一度、笑ってみなよ」っていうセリフですよね。それからあの4人に歌わせたって事ですよね。アフレコ終わった後にスタジオに残ってもらって録ってるんです。ピエロが絡むフィルムのムード自体は「フェリーニの道化師*2」がイメージになってます。
−−−それでは、キラルは盲目のファイターですよね? ってことは自分がどんなガンダムに乗ってるか知らないわけですよね?(28話)
デザインを知らないってことね! ちゃんと知ってますよ。キラルは気力で形が分かるんです。向かい合ったときに空気の流れで(笑)。「これはこういう形をしているな。まさしくこれは私の機」(爆笑)。
−−−でも11回大会では正統派って感じのガンダムに乗ってたわけじゃないですか。それにキラルはドモンと闘うまでは全ての対戦ファイターを殺してきた。だから、キラルはドモン戦ではじめてあのマンダラガンダムに乗るわけですよね?
でも、あれはあくまでもネオ香港に来てからの話かも知れないですよね。たしかに、それまでもそうやって勝ってきていてもおかしくないし。一応、不戦勝を続けているのは公式的にはネオ香港にはいってからなんで。おそらく、それまでも寝首を欠いてるだろうし(笑)、闘ってるかもしれない。まぁ、あそこで初めて乗ったっていう解釈でも構わないですよ。
−−−くどいようですが、ネーデルガンダムもいますけど、やっぱりあのデザインはきてるなって…。
(笑)。まずネーデルガンダムはね、21話のコンテ描きながらクスクス笑ってたわけなんですよ。「これだよなぁ、やっぱり俺のガンダムは」って。あの頃からネオ香港での一話完結の対決の面白さ…、これでなくっちゃ!っていうの考えてるんです。まず、自信を持って贈ったものが、あのネーデルガンダム(笑)。ネーデルガンダム大好きですからねェ、あの姑息に隠れてるっていうのが…(笑)。小鳥鳴く草原の中で、あいつがド〜ンとね。変型をもっと細かく見せたかったぐらいでね。まぁ、正統派はゼウスガンダムですよね。あれなんかも僕は凄い好きなガンダムなんですよ。26話で何故ゼウスガンダムを持って来たかと言うと対決話がはじまるときに一番最初に強い奴をぶつけたくなるんですよ。そのほうが勢い付けのためにもシリーズが面白くなるだろうと思って。その時に一番強いのなあ〜にって言うと、子供にとって一番分かるのがゼウスガンダムなんですよ。「ビックリマン」にもスーパーゼウスっていうのがいますよね。あれの人気がある理由も分かるし、その認知度をある程度頂いている部分もあります。やっぱり子供にとって一番強いものをわかりやすく見せてあげたいっていうのがありますね。
余談になりますけど、シリーズ後半での僕にとっての二大ガンダムっていうのがマーメイドガンダムとマンダラガンダムなんです(笑)。もしガンダムを三体あげろって言われたら当然もうひとつはネーデルガンダムですよ(笑)。
マーメイドガンダムの場合は、シナリオ段階で既に名前があったんです。もちろん、誰もあんなものを想像してませんよ(笑)。そろそろメカを発注しなきゃいけないってときに、設定の河口(佳高)君が「急いでるから」っていうんで大河原(邦男)さんの描いてきたデザインをアフレコスタジオに持ってきたんです。マーメイドは最初、普通の二足歩行だったんですよね。けど、僕としては「違う…」(笑)。こうだ、こうだって河口君とふたりでクスクス笑いながら描いてね。大河原さんが最初描いてきたのは半漁人だったんですよ。マーメイドっていうのは人魚のことなんですけどね。これもデザインは凄く良かったし、面白かった。だけど、もっと強烈なデザインに、もっとマーメイドにするんだ(笑)っていうね。デザインが悪くてリテイクを出すんじゃないんで、大河原さんには悪いなって思ったんですけどね。ひとつだけあの形にした理由は、水中で強いガンダムだから水中に一番適した形にする必要がある、それは魚だ。ストレートなんですよ。だから、子供に水中で一番強いガンダムはどんなの?って聞いたときに、どんな形よりも魚だから速くて、強くて、自由なんだっていうのが一番説得力があると思ってます。今後何かあっても私は同じことするでしょうから(笑)。
マンダラガンダムは、実は最初考えたのがジェスターガンダムのデザインなんですよ。仕込み杖というか刃物を持ってるって意味で、腕が半月形になってて…。ただ描いててね、腕の曲線がピエロらしかったんで、これはジェスター用にとっておこうと。やっぱりマンダラって言えば仏教だろう、だったら鐘だよな(笑)。次に描いたのが鐘で、河口君とクスクス笑いながら「静かにしよう、アフレコ中だから」とか「頭はやっぱり丸いのがついてないとダメですよ」って二人でやってたんですよ。これはとてもいい思い出です。デザインなど表面的な面では、私のGガンダムを最も理解していた人が河口君でしょう。あと、顔をどうするかでね、ひとつやってみたかったのが、シャイニングガンダムが登場するときに、花の中からっていうほかにあったのが、ボロ布をまとったガンダム。メカよりもボロ布をまとったほうがさすらいっぽくていいかなって思ってたんですよ。ボロ布を風になびかせて歩いてくるガンダムっていうのは強烈かな(笑)って。結局、花のほうを選んだんです。ファラオガンダムなんかにも使いましたけどね。一番スタンダードな形として残ったのがマンダラガンダムの顔なんです。実はあれにもモデルがあって「スタートレック2 カーンの逆襲*3」。あれでカーンが出てくるシーンなんですよ。ゴッドガンダムとの闘いがもっと長ければ、マンダラガンダムが顔の布切れを剥がすところとかやりたかったんですよ。実はあの下に牙があるとかね。
あとは声優さんに麦人さんが来てくれた事が非常に嬉しかったですね。Gガンダムの声優さんの配置として、出来るだけ僕の知らない新しい人を使いたかった。特に主人公っていうのは、関(智一)君がどれくらいのキャリアの人か知らなかったんだけど、いっしょに作っていきましょうっていうのがあるんですよ。ベテランのスタンダードなものを持ってしまったところから始めるんじゃなくて、ゼロとは言わないけれど、キャラクターとどうかしていってほしいっていうのがあるんです。それに対して、ゲストの人達っていうのはベテランで押さえてね。若手のガムシャラさとベテランの力強さっていうのが、Gガンダムのファイター同士の闘いに反映したい部分だったんですよ。おそらくそれが一番強烈に出たのがキラルだったんじゃないかな。他の方が失敗だったという訳じゃなくて、関君との絡みの相性が一番良かったかもしれないってことですね。あとは誤解を受けないように、僕がトレッキーだから麦人さんを呼んで来たわけではないんです。これは偶然なんです*4(笑)。僕の知らないところで用意されていたキャスティングですから。僕の体験したことのなかったベテランの味を教えてもらえた方だと思いますね。よくぞこんなに! ピッタリ合ってた人でしたね。
マンダラガンダムは、みんな見て笑うんですよ。僕はね、どんなにカッコ悪いメカでも、それをカッコ良く見せるのが演出だと思ってるんです。デザインとフィルムでのカッコ良さっていうのは違うんだと。マンダラガンダムが出てきて、動いて、闘って、カッコ良く見えて来る。まぁ、さっきクスクス笑いながらとは言ったんだけど、デザインを発案するときに必ずするのが、本編の中でどう動いているかっていうところから入っていくわけなんですよ。こんな感じって描いてみて、これが本編ではこんな風にって動きのポーズを描いてみる。鐘の下からバーニア吹いて、こう構えてズルズルズルズルって動く姿なんか、これはカッコイイと。他のガンダムにはないものがここにはある。それぐらい気にいってるんですよ。たしかに、非常にインパクトはあるでしょう。まさかこんなものがと思ったかもしれませんが、キャラクターと同化してキラルがあの中で一生懸命に闘っているのを想像したら、あのガンダムは笑えない。もっともっとマンダラガンダムは演出したかった。やってないカッコ良さがもっとありますよ。
ひとつだけねぇ、ただひとつだけ笑っちゃったことがあるんですよ。最後に真二つになって転がるところありますよねえ、「中身ないよあれ!」って(笑)。そのへんは逆にご愛嬌なんですよ。本当は割れるときにゴォ〜ンって音入れようかとかね(笑)。でも、そういう面白さってあるじゃないっていうね。お約束というか、藤山寛美の芝居のような本能的な面白さっていうのが、あのマンダラガンダムにはあると思ってるんです。
−−−次はシジーマですが、奴はコブラに乗ったままコブラガンダムを操縦してますが、途中で分離したときコブラがいなくなるんですよ。(27話)
蛇は乗り移ってるんです(笑)。あれは二体っていうかね。逆にマーメイドガンダムではやらなかった事なんだけど、マーメイドガンダムもあの魚の口の中からガンダムがズルズル出てきて…(笑)、実はあの中から半魚人型が出て来てもいいかなって思ってたんですよ。それは、考えてはあるんだけどあの話の中では出さなかったってだけなんです。それと同じで、ハンスのコクピットの中にも実は水槽があって魚が泳いでる(爆笑)。シジーマに関してはあの蛇との仲の良さがひとつのポイントなんですよ。逆にハンスの場合は、魚との友情を描いてませんから(笑)。風雲再起とマスターには師弟関係という形の友情があるわけなんですよ。シジーマにはヘビちゃんとの友情があるんです。ハンスの場合はセシルもいて、サイ・サイシーもいて、魚との友情を描く余地がないんですね。本当は魚を抱いてとか、魚に乗って、とかをやりたかったわけなんですよ(笑)。
−−−次に、マタドールガンダムの決め技「レッド・フラッグ・カモン」とはどういう技なんでしょう? これを見てレインが「何度見ても凄いわ」(笑)って言っているんですが?(29話)
あれは、あのまま包み込んじゃうっていうか…、闘牛士の…(笑)。「何度見ても凄いわ」ってね、あれはわざとやった部分もあるんだけど…。僕の変なところらしいんですよ。僕はあのセリフを真面目にやってるんです。ただ人が見たら変だ(笑)ってね。あの世界の中で、もしも、あの世界が本当にあったら。あのマタドールガンダムの必殺武器なわけですよ。凄い技なんですよ。どんなときでも、あれを出せば敵をやっつけられる必殺の兵器である以上「何度見ても凄い」ものなんですよ。
おそらく熱源体みたいなものが、あのまま飛んで行くんじゃないかな、磁場を作って…。ブレスファイヤーみたいにこお…。
−−−(笑)。皆さんのご想像に任せると言うことで…。
想像する事も面白さなんです。作品をどう読むのか!
−−−それではいよいよ四天王が本格的に物語に絡んでくるわけなんですが、ガンダムヘブンズソードの「天剣絶刀」だけはオリジナルな名前ですよね。何故これだけ?(32話)
実は最近になってね、自分でも分からないんだけど、こんなのをどこかで見た覚えがあるんですよ。ちょっと確認してないんですけど、確かにこういうタイトルの映画は当時なかったんです。自分のオリジナルで作ったのはたしかなんですが、ただ、あとで見てびっくりしたような記憶もあるんですよね。今正直言って、オリジナルだって、言い切っちゃっていいのかなっていう不安も少しあります(笑)。
1 ゴッド・ギャンブラー
'89 監督・脚本:バリー・ウォン 実在したと噂される天才ギャンブラーの伝説を映画化。“賭神”と恐れられる天才ギャンブラー、コウをチョウ・ユンファが熱演。彼の集大成ともいえるファン必見の作品。
2 フェリーニの道化師
'70 伊・仏・西独合作 監督・脚本:フェデリコ・フェリーニ フェリーニ自ら出演したTV用映画。少年時代から憧れ続けていたサーカスの世界を、真正面から取り組んだ傑作。
3 スター・トレック2 カーンの逆襲
'82 米 監督:ニコラス・メイヤー TVファーストシーズン(クラシック)にも登場した、悪の帝王カーンが再登場する劇場版2弾。本編に登場する惑星ジェネシス誕生シークエンスは、ILMが劇場映画用に初めて手掛けたフル・コンピューター・グラフィックス。トレッキー以外の人にも一見の価値有り。
4 僕がトレッキーだから…
麦人さんは「無責任艦長タイラー」のミフネ中将で知られる声優さん。その麦人さんが「新スタートレック」でピカード艦長を演じているのは、サードシーズン51話から。しかし、関東地区のオンエアは、セカンドシーズンまでで終了しているのです! 関東及び未放映地区の皆さんが麦人さんのピカード艦長を拝めるのはいつの日か?
(以下、第5回に続く)
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