西原理恵子さんといったら、たきがはのなかでは神足裕司さんとの傑作非グルメエッセイ&漫画『恨ミシュラン』のすんばらしい毒を吐きまくってた漫画家でありました。まず第一に。その後、『まあじゃんほうろうき』とか『ちくろ幼稚園』とか読んで、けっこうその世界観がくせになっておりました。そこへ『ぼくんち』映画化であります。これはもう行くしかないな、期待十分。ましてや監督は「KT」や「顔」を撮った阪本順治さんであります。期待するなって方がどうかしているのです。
関西のどっかにあるような水平島。兄弟二人きりで暮らす一太と二太のもとに、ある日行方不明のかあちゃんが姉ちゃんのかの子と一緒に帰ってきた。とうちゃんは3人とも違うとかあちゃんは言い、またすぐにいなくなったけれど、姉弟のささやかな暮らしが始まった。かの子に頼らず、ちんぴらのコウイチくんに裏商売の手ほどきを受ける一太。無邪気に姉ちゃんに甘える二太には片思いのさおりちゃんがいるけれど、ろくでなしの父親と暮らすさおりちゃんはお金のことにしか興味がない。ある日、かあちゃんが勝手に家の権利書を売ってしまった。かの子はアパートを借り、ピンサロ勤めを再開する。学校に通えない二太は鉄じいを手伝ったり、刑務所から帰ってきたばかりの安藤くんと遊んだりしている。しかし、早く独り立ちしたい一太は宝物のバッジを二太にやって町を出ていき、二太にもじいちゃんが迎えに来る。姉弟はばらばらになってしまったけれど、町でただ1軒の中華屋でまずいラーメンを食べながら、かの子は母を許し、ある決断をするのだった。
漫画の空気を映画に映すのはむっちゃ難しい。一言で言っちゃうとそういう映画。一太と二太の兄弟もかの子もかあちゃん(今日子)も俳優陣はいい味出しているし、二太などすごく可愛いんですが、西原漫画に特有のほのぼのさと表裏一体の毒の強さはやはりあの絵、あの線だから出せるのかなーと思いました。いや、漫画と映画を比較してはいけないと思うんだけど、漫画のような展開見せられると、やっぱり漫画的なものを期待してしまうんですよ。原作付というのはこれだから難しいんだなぁ。まぁ、たきがはも漫画で育っている世代であるということは否定しませんけどね。
(了)