ダスト

ダスト

イギリス・ドイツ・イタリア・マケドニア、2001年
監督・脚本:ミルチョ=マンチェフスキー
出演:ルーク(デヴィッド=ウェンハム)、イライジャ(ジョセフ=ファインズ)、エッジ(エイドリアン=レスター)、アンジェラ(ローズマリー=マーフィー)、ネダ(ニコリーナ=クジャカ)、リリス(アンヌ=ブロシェ)、他
見たところ:恵比寿ガーデンシネマ

こんな映画が見たかった。

「だれか、私という物語を覚えていてほしい」というキャッチコピーにつられて行きましたが、気持ちよく予想を裏切られて、久しぶりにストーリーテリングとしての映画を堪能させてもらいました。こういう映画が単館なのはほんとにもったいないと思う。CGの派手さとか、キャストの豪華さ(たきがはにはどこが豪華なんだとしか思えないラインナップでも)、監督の知名度、それになにより「ハリウッド」という名前だけで売ってる映画より、こういう映画をもっとちゃんと宣伝してほしい。

 金に困ってぼろいアパートに忍び込んだ黒人のチンピラ、エッジは、その部屋の住人、老婆アンジェラに、最初は銃で脅されて、また金貨をやるから故郷に埋葬してほしいというおかしな条件で、彼女の昔話を聞かされることになる。それは百年前のアメリカ西部と、ヨーロッパの辺境、現在のマケドニアを結ぶ物語だった。ルークとイライジャの兄弟は、リリスという娼婦にひかれたことがきっかけで仲違いする。ヨーロッパに渡ったルークは賞金稼ぎの仲間に入って、独立運動目覚ましいマケドニアへ、その後を追ってイライジャもまた。イライジャに重傷を負わされたルークだったが、地元の娘、ネダの看護によって命をとりとめる。だんだん物語に引き込まれてゆくエッジ。だが彼は悪徳警官に期限付きで大金をせびられており、アンジェラの容態も悪くなって...。

交錯するニューヨークとマケドニア。語り手であるアンジェラとルーク、エッジのそれぞれの物語がうまいこと軸をなしていまして、「だれか、私という物語を覚えていてほしい」というのが、アンジェラ一人のことだと思っていたたきがはの予想はまずここで裏切られ、あとはなんといってもラストです。このキャッチコピーがラストで私たち自身のことでもあるのだと普遍的なテーマになる。ここです。ゆえに、アンジェラもルークもエッジも、私たち自身になる。ストーリーテリングの妙は、まさにここにあるのだと思いました。

ところで、ルーク役のデヴィッド=ウェンハム氏、「ロード・オブ・ザ・リング」の次回作に登場だそうで。うふふのふー。きっとあの人ね? それとも彼かしら? お会いできるのが楽しみですわん。また、「恋に落ちたシェイクスピア」でも、「エリザベス」でも、無精ひげが汚いとたきがはに嫌がられてたジョセフ=ファインズ氏、今回は逆に無精ひげが格好良かったです。

(了)

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