映像と色彩のファンタジー。ギャベとは遊牧民カシュガイ族の作る草木染めの絨毯のことで、ヒロインの名前でもあります。イスラム革命後のイランでは色がなくなってしまいました。色の復権を目指して撮った映画だそうです。また、イランは詩人の国でもあり、今回見たマフマルバフ監督の映画のなかでも詩的な台詞廻しが多くありました。
川辺に住む老夫婦は今日も仲良く喧嘩をし、ギャベを洗う。そこに老婆と同じような服装の美しい若い娘が現れた。彼女の名はギャベ。娘は問われるままに自分の身の上を語り出す。厳格な父、独身の伯父、ギャベだけにわかる狼の声で愛を語る若者のこと。二人の結婚はなかなか許されない。伯父の結婚、母の出産、とうとう白馬に乗って、若者と駆け落ちするギャベ。それはこの老夫婦の若い日の出来事であった。
個人的に好きなシーンが伯父さんの色の授業です。「赤」と言って草原に手を伸ばし、野生のチューリップを摘む(芥子に見えるけどイランのチューリップ)。「黄色」と言っては太陽(太陽を赤く塗るのは日本ほか限られているそうで、たいていの国では黄色)に手を差し出して黄色く染まる。「緑」は草を摘み、「青」も手が染まる。素敵な授業でした。
監督には野心作でもけっこうお気楽に見られた1本。
(了)