マレーナ

マレーナ

イタリア、2000年
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
出演:マレーナ(モニカ・ベルッチ)、レナート(ジュゼッペ・スルファーロ)、ほか
音楽:
見たところ:厚木テアトルシネパーク

 第二次大戦開始後のイタリア・シチリア島の小さな町。12歳のレナートはちょっと背伸びしたい年頃の男の子。ある時、年上の友人から、町で評判の女性マレーナのことを教えられて、彼女に以後、崇拝に近い恋心を抱く。彼女は町中の男たちが抱きたいと思っている女性で、戦地に赴いた夫を待って、耳の悪い教師の父と暮らしているが、ある時、彼女の元に夫の戦死の知らせが届き、レナートの願いも空しく、マレーナの運命は悲劇的な方へ転がり出してゆく。

空想癖のあるレナートは、寝ても覚めてもマレーナのことばかり考えているので、「七年目の浮気(マリリン・モンロー相手に妄想が暴走する、中年サラリーマンのラブコメディ)」さながらに妄想シーンが入り込む。これってギャグを狙ったのかなぁ? というか、ここまで過激に妄想させなくても、レナートがマレーナを慕う気持ちは伝わると思うんだけど、サービス過剰のような。

それよりすごいのが町の人のマレーナへの感情で、男は彼女を眺めては「いいけつだ」とつぶやき、女は「どうせ陰でよろしくやってるのよ」と大っぴらに陰口をたたく。ちょっと待てよー。この町には他に出征した夫のいる妻はいないのかよーと思っちゃいました。知り合いの男がマレーナに挨拶するときに「ぶっちゅー」と効果音も派手に手にキスをする。な、なにか間違ってないか。この映画のテーマは「少年の日の憧れの女性」ではないのか。これってただのセクハラじゃん。

マレーナの夫が死ぬと、今度は砂糖に群がる蟻よろしく、まあ男が来るわ来るわ。誓って言うが、マレーナは一度たりともそんな素振りは見せないんですぜ。周りが勝手に決めつけて、言いたい放題しているんだ。レナートの同級生でさえ、マレーナの父である教師に「マレーナとやってもいいですか」なんて言っちゃう。ところがこの先生は耳が悪いので、手を挙げれば、なにを言っても「トイレに行きたい」だと見なしちゃう。って、耳が悪い以前に聞こえないのでは? それでラテン語教師ってなれるものなの? 耳が悪い人をなめくさってないか?

ところが、心ない奴の手紙で父親には勘当されるわ。町を占領に来たドイツ軍相手に娼婦になっちゃうわ。それでイタリアが敗戦すると町の女に袋叩きにされて、町から追い出される。

 そこにマレーナの夫が帰ってくる。片腕を失って、けれども彼は、レナートの匿名の手紙をきっかけにマレーナを探し出し、二人で町に帰ってくるのである。町の女たちはマレーナを受け入れて、レナートもこの初恋に別れを告げた。

見た目はハッピーエンド。でも、なんか納得がいかんぞ。夫がいるというだけで手のひらを返すような態度。最初から彼女を信じてやれば良かったのでは? 監督の女性観を観たような気がするよね。ふーん、夫のいない女性はそういう扱いを受けてもしょうがないって感じ? 「海の上のピアニスト」の監督なんですってね。ちょっと納得したよ。

(了)

[ もっと映画日誌を読む | 映画日誌のトップに戻る | 五十音順一覧 | 映画のトップに戻る ]
[ トップページ | 小 説 | 小説以外 | 掲示板入り口 | メールフォーム ]