その日、渋谷は雪混じりの雨だった。買ったばかりの前売り券を握りしめ、渋谷の町を徘徊していたたきがはは「明日は雪で電車が遅れるかもしれない。そうなったら出かけるのはなしだな」と考えて、その日、5本目の映画を見に行ったのだった。それが「RAIN」。
耳の聞こえない殺し屋コンの悲しい物語。
ポスターに惹かれました。雨に濡れそぼった主人公が銃を頭に当てて、今にも引き金を引こうとしている。男前(ここ重要)。アジア系。浅野忠信ばりに無精髭がお似合い。ポイント高い。これは行くしかないでしょう。とかなり単純な理由。映画のきっかけなんてそんなものさ。趣味むき出し。
耳の聞こえない殺し屋コンは、兄貴分のジョーとその元彼女で組織との連絡役でもあるオームしか知る人のない孤独な青年。彼はただ組織の命じるままに人を殺してきた。小さい頃から耳が聞こえないことで仲間外れにされて友だちも家族もいないコンにはジョーとオームだけが世界の全てだったのだ。ジョーが仕込んだ銃さばきは天性の勘も手伝って天才的な才能を見せるコンだったが、利き手に負傷したジョーは殺し屋をやめていた。ある日、熱を出したコンは薬局で働くフォンと出逢う。初めて知った人の温もり、そして初めての恋。けれどもオームが組織の客であるマフィアに襲われてからジョーとコンを取り巻く状況は一変する。ジョーの報復、組織の裏切り、ジョーとオームの死。一人残されたコンは...。
というのがあらすじ。孤独さをたたえたコンがなかなか良い眼差しなんですが、いまいちのめりこめませんでした。それは主人公が最後に死を選ぶという結末ではなくて、物語の重心がジョーとコンにばらけたかなと思ったのと、耳の聞こえないコンの孤独さがもっと強調されても良かったんじゃないかと思ったからです。
孤独なコンは、ジョーとオームを失って初めて自分のしたことの罪深さに気づくんですが、そういうところのエピソードも丁寧に掘り下げてくれるとまた良かったのにな、と思います。次作に期待、かな?
(了)