ひねりも裏もない、正統派刑事アクション。決してけなしているわけでなくて、まんま。
韓国からの脱走犯を韓国まで護送した早瀬祐太朗刑事。その帰途、飛行機に乗り遅れそうだった彼は、ソウル市内で頻発している現金輸送強奪事件に遭遇するが、犯人を逃がしたばかりか、誤ってもう一人も射殺してしまう。ソウル市警に72時間の滞在許可を与えられた祐太朗の任務は、６万人の容疑者リストの中から逃げた一人を特定すること。しかし、アジア首脳会議の開催、韓日合同銀行の開店を控えたソウルはにわかに慌ただしくなってきており、祐太朗はキム部長刑事と衝突しながら、事件の核心へと突っ込んでゆく。
長瀬くんが主役なので、客層は女性陣多し。しかもパンフが売りきれとはこんな映画初めて。早瀬祐太朗は好感の持てる熱血漢で、けっこう感情移入して見てました。単細胞かと思ったらそうでもなくて、ただ一人の日本人で、言葉も通訳を介してしか通じないところで頑張ってました。まぁ、ひねった見方をすると、アイドル（男）が主役のアクション主体の話ってこういうキャラクターが多くないですか？ 長瀬くんのキャラクターだと「リング 〜最終章〜」のクールな役なんて好みだったんですけど。
チェ＝ミンス氏。彼が目当てで行きましたとも。長瀬くんをグーで４回、元部下も１回殴ったお方。最初はばきばきの堅物で規則優先、日本人嫌いなのかと思うほど長瀬くんと対立し、元部下には冷たくされるけれど、途中で暗い過去を背負っていることが判明、クライマックスではがぜんかっこいいところも。キム部長もけっこうパターンですね。挫折した元エリート。異質な主人公とお堅い相方。やがて言葉や文化の違いを乗り越えた二人の間に、友情なんて甘っちょろいものは要らないぜ、みたいなキャラクター。と言うか、そういう話。ただし、チェ＝ミンス氏、「ユリョン」以来、役柄が似通っているのがつまらない。眉間にしわ寄せて、自分の苦悩に没頭しているキャラクター以外が見てみたいな。
韓国の俳優さんは他に知った顔が一人もいないのが残念。
本作のヒロインにあたる通訳嬢キム＝ジヨンさん。というか他に女性いないんですよ。男ばっか。キム部長をどうも密かに慕っているっぽくて長瀬くんとのロマンスはなし。って深読みしすぎかなぁ。ただ、キム部長が笑わなくなってから、どうも彼女も笑ってないっぽくて、心痛めてるように見えたの、わしだけか？ けっこう頑張っていたので、アクション映画にありがちな添え物のヒロインにならなかったところはまる。ああいう扱いはいやですね。というかね、アクションて男が強くて女が添え物になるか、女がバカ強くて男の出番がないか、のどちらかのような気がするんですよ。男と女が対等なアクションとか見てみたい。
勧善懲悪の単純なアクション映画（実もふたもない言い方だな、でもホントだ）なので、深刻に見るものじゃないのだけれど、気になったところを一つ。祐太朗が立ち退きを迫られた屋台のおじいさんと孫を助けてごちそうになるシーンで、おじいさんが「わしらの世代はみんな日本語をしゃべれるよ」って言うんですよね。ここで祐太朗に一言「なんで」って言わせてほしかった。韓国が日本の植民地だったことがあって、その時の皇民化政策（確か、そんな名称）の名残だってことを、この映画を見に来た若い世代に教えてあげるべきだったと思ったですね。
（了）