盲目の少年コルシッドは楽器職人の親方の元に通って、楽器の調弦をするのが仕事だ。父親は徴兵に取られて一家の稼ぎ手は彼一人、けれども家賃の支払いが滞ったことで、大家はコルシッド親子を追い出そうとしていた。そんな時、コルシッドは町にあふれる音、大家が家のドアをたたく「ダ・ダ・ダ・ダン」という音にみせられて、仕事に遅れてもその音を追いかけるようになっていく。とうとう仕事も首になってしまったコルシッドは家を追い出されたことを知った。
これがハリウッドあたりで撮ると、コルシッド少年の音感が特別なもので、常人にはない才能を見出された彼は良き音楽の師を得て、という映画になるな、と思ったわし。そうじゃないところがマフマルバフ監督。
どうしてコルシッドのお母さんが働かないのか。女は働き口がないのかもしれない。
親方の口振りから察するにコルシッドは遅刻の常習犯らしい。同じ勤め先の美少女ナデレーもそのことは承知しているはずなのに、一緒にいても遅刻する。
あと数日で家賃が払えないと家を追い出されるとわかっていても音を追いかけてしまうコルシッド。家賃の分、前借りできないか訊いてみてってお母さんが言ってたじゃないかぁぁ。そこでバス降りるなよ。
と、わからないところがいくつかありました。これはもうコルシッドが可愛いとかで済まされない映画なのかなぁと深く首を傾げてしまった。ラスト、コルシッドの指揮で金物屋が鍋をたたいて「運命(ダ・ダ・ダ・ダンという音がこれ)」を演奏するシーンは圧巻です。
(了)