ケン=ローチ監督最新作。ぜんぜんタイトルのように甘くない、ひりひりといたい映画。リアム役のマーティン=コムストンくんは元プロのサッカー選手。微妙な表情がたきがはの大好きな「スタンド・バイ・ミー」のクリスを彷彿とさせまする。
リアムは15歳。服役中の母ジーンとその恋人のスタン、祖父のラブと暮らしていて、シングルマザーの姉のシャンテルと甥のカルムは別居している。ピンボールは兄弟も同じの親友で、もう9ヶ月も学校に行っていない2人は、煙草を売って小銭を稼いでいる。母が出所したら、シャンテルやカルムも一緒にスタンのようなちんぴらの手の届かないところで母と暮らすのがリアムの夢だ。そのために理想的な家を見つけたリアムは、スタンの隠していたドラッグを盗み出して売りさばき、それだけでは足りなくて、ピンボールの止めるのもきかずに、実力者ビッグ・ジェイの客をかすめようとして、逆にその売人になる。ピザ屋を隠れ蓑にしてドラッグを売るリアムは、その利発さがビッグ・ジェイに可愛がられるようになるが、第一印象で失敗したピンボールはこけにされるようになり、2人の仲は冷えきってしまう。リアムの16歳の誕生日の前日に出所したジーンは、リアムの用意した新居に驚くが、リアムの期待を裏切ってスタンのところに戻ってしまい、16歳の誕生日に、リアムはとうとうスタンを刺してしまうのだった。
16歳にしてはなかなか頭もまわるし度胸もいいリアムなんですが、そこは若さの悲しさ、大人の悪知恵にはかなわんわけです。どこか世間に冷めているようで、暖かい家庭に憧れてもいるリアムの表情が格別に良いです。最後の電話に託された監督の希望。それは、無数のリアムへの厳しくも暖かいメッセージではないかと思いました。
(了)