ホワイトアウト

ホワイトアウト

日本、2000年
監督:若松節朗
出演:富樫(織田裕二)、宇津木(佐藤浩市)、奥田署長(中村嘉葎雄)、平川(松嶋菜々子)、吉岡(石黒賢)、ほか
原作:真保裕一
撮影:山本英夫(「殺し屋1」の山本さんですよねん?)
見たところ:うち

 今年の映画初めは珍しくテレビから。

雪に閉ざされた厳寒の巨大ダムにたてこもったテロリスト集団に、山の経験豊富なダム職員がたった一人で挑むアクション大作。

テレビが初見でした。そこそこ楽しみましたが、突っ込みポイントも満載。ハリウッドだからアクションがいいとか、日本だからおぽんちだとか、そういう偏見は捨ててもいいんじゃないかと思います。舞台の大きさではアメリカにはかなわないけど、アクションの善し悪しがそんなもので決まらないことは「七人の侍」が証明済みですもんね。それで「ホワイトアウト」です。

 日本最大の貯水量を誇る奥遠和ダムの職員富樫は、雪山の遭難者を助けた際に、無二の親友吉岡を失ってしまっていた。それから2ヶ月後。雪に閉ざされた奥遠和ダムに吉岡の婚約者平川がやってきたちょうどその日、ダムは宇津木率いるテロリスト集団に占拠されて、ダムに通じる道は閉ざされた。不審者の捜索に外に出ていた富樫は人質にならずに済んだが、テロリストとのたった一人の孤独な戦いが始まった。宇津木の要求は50億円。24時間以内に果たされなければ、彼はダムを爆破すると日本政府を脅迫する。奥遠和ダムが崩壊すれば、下流のダムにその濁流を受け止める貯水量はなかった...。

富樫スーパーマンすぎ。これはまぁいいとしましょう。銃の扱いも慣れすぎてんじゃないの、とか思ったけど、1人でがんばるんだから、多少はスーパーマンじゃないとな。

宇津木の動機がいまいちわからん。というか、日本政府相手にたかだか50億円請求かぁ? それぐらいもらって海外高飛びしたって、1年ともたずに使い切っちまうぞ(偏見です)。だいたい「金目当てのテロリスト」って設定、今時どうよ? 国家転覆とか、それぐらいスケールの大きいこと言ってくれよ。難攻不落の要塞と化したダムにたてこもるんだから、もうちょっと大きく出ようよ。これはすごーくマイナス。悪役の魅力はこの手のアクションに限らず、大切です。悪役がとことん魅力的だから、それに対峙するヒーローが光るのでありまして、そういう意味ではアクション以前にキャラクターがおぽんちでした。

それでいちばん許せなかった点。平川邪魔。なにしに出てきたんだ、この女(「あま」と読んでね)。富樫ががんばっている傍らで「来るはずない」とか「1人で逃げるに決まってる」とか、富樫がカメラに写れば、思わせぶりに反応するし、ラストでは人の邪魔するし。存在そのものが添え物やん。松嶋菜々子を出しておけばええやろ、というスタッフのすけべ根性が見え見えで、キャラクターは最低っす。はっきり言って、この女を利用して富樫の弱みにつけ込めないテロリストも間抜けです。利用できるものはとことん利用せえ! それぐらい命張らんかい!

奥田署長、警察がこちこちの「官僚主義」に固まってるなか、1人でいい味出して、1人で頭の冴えも見せてたのに「君はよくがんばった。そこで休んでいいよ」はないぜよ、おっちゃん。何一つ解決してないのに、富樫のそれまでの苦労を無駄にするこの台詞、これで格がた落ち。富樫と協力してテロリストを追いつめるとか、もうちょっときばってくれよ。

原作は読んでないので、どうだかわかりませんが、キャラクターの造型が1人1人甘すぎます。

あとラストの「ホワイトアウト」。あの出だしであの結果はちょっとないんじゃないの? 富樫も無事じゃないような雪崩になるだろう、ふつう。もっとすごいの期待していたたきがはは大いに肩すかしをくらっちゃいました。それぐらい覚悟の上で富樫は「ホワイトアウト」を引き起こしたんじゃないんすか? 妙な甘っちょろさは抜きにしてほしいです。それでも生き延びる手段を持ってるスーパーマンっていうぐらいの設定はほしかったです。

ハリウッドがどーとか日本映画だからどーとか、そういう次元の低い比べっこはやめにしましょう。日本映画よ、もっと勉強してくれ。ハリウッドだけじゃなくて、世界の映画をもっと見て、目を肥やしてくれよ。というか、ハリウッドだけ見てたんじゃ、すごくけつの穴の狭い映画しかできんぞ。新年早々、下品なやつですみません。

(了)

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