誤解を恐れずに言わせてもらうならば、男が男らしくいられた時代の、男臭いかっこいい映画です。主演の山本太郎さんからして、出演者が男臭さと男らしさ丸出しで、女性も色っぽくてパワフルで、そのパワーに圧倒されつつ、生命力と格好良さにほれぼれとさせられる映画。差別的な言い方かもしれないですけど、やはり「男らしい」ということは格好いいのだなーと思いました。そういう「らしさ」とそうでない個性と、両方あっていいと思うんですが、なんか片っぽしかないのって変ですよね。
主題歌もぐー。キャッチフレーズの「青春はイノチガケ」に恥じない、見応えのある映画でした。
日本敗戦後、1958年、大阪。在日コリアンの集落に住むヨドギ婆さんの拾った鉄くずが大金になることを知って、男たちは警察の目を盗んで、アジア最大の兵器工場と言われた、大阪の兵器工場跡に侵入する計画を立てる。3年ぶりに集落に帰ってきた義夫の乗ってきた船で、向こう岸の工場に行って、13年も日本が放ったらかしにしている兵器を盗み出し、翌朝には屑鉄屋に売り払う算段だ。後にマスコミに「アパッチ」と呼ばれた鉄屑盗掘集団の誕生であった。鉄屑の盗掘は現行犯を押さえねばならないため、警察の見張りは徐々に厳しくなっていくが、その網をかいくぐり、男たちは逞しく、鉄を盗んでいく。ヤン婆さんの飲み屋に姪の初子が勤めるようになり、義夫は彼女に心惹かれる。また、父と兄を殺害した健一が情婦を連れて集落に戻るが、初子を巡って義夫と対立することに。しかし、健一は銀行強盗の上前をピンハネして仲間に殺され、その金を預かった義夫は警察に返しに行って、逆に拷問にあい、若林刑事に救われて釈放される。鉄屑の収穫が徐々に落ち始めて、仲間のなかには北朝鮮に向かう者も現れた。そして1958年冬、警察の威信を賭けた手入れが集落を襲い、人びとは老若男女問わず根こそぎ検挙されてしまう。何者かの放火で集落も焼け野原になってしまった。その直前にようやく初子と心の通じた義夫は、彼女をかくまい、自分は一人、警察に立ち向かっていくのだった。
集落のセットは韓国に作ったそうです。それも役者からスタッフから総出で。だからか、泥臭い感じが、いかにも戦後、って感じで、雰囲気もばっちり。「アパッチ」は実在の集団で、原作者の梁石日氏もその一員。「血と骨」とか読んだけど、すごーく骨太な小説を書かれる方ですね。やはり「月はどっちに出ている」観たいなぁ。
しかし、この映画は、やはり泥臭いまでの男らしさにあふれた役者陣の勝ちです。劇中で「日本にも国にも見捨てられた俺たちに未来はあるっていうんか?!」「あるっ!」と言い切ってしまう、義夫に代表される男たちの、むせ返るような男臭さと男らしさと汗臭さの勝利です。ふてぶてしいんだけど可愛くもある義夫のキャラクターは惚れますぜ。山本太郎氏、要チェックねん。
こういう男らしさがお嫌いでない方は是非。
また、本作品を最後に、日本芸能界の名バイプレーヤー、清川虹子さんが永眠されました。ご冥福をお祈りしたいと思います。冒頭の「わかっておるわい、どあほう」という登場シーン、好きですねぇ。ああいうパワフルな婆ちゃんキャラクターが書いてみたいわぁ。
(了)