予告を何回か見て、行かなくっちゃなるめぇと思った映画。最近、たきがはの好きなイラン映画だし、音楽もいいし、おもしろそうだったし。監修のアッバス=キアロスタミさんはイランでも世界的に著名な監督のお一人。イランという国土にも憧れがあります。日本とまったく違う乾燥地帯、赤茶けた大地は一度行ってみたいところなのです。砂漠という別世界に強く魅せられるものがあるのはなぜなのでしょう。
ちなみに「FARDA」とはイランの公用語(たぶんペルシア語)で「明日」って意味です。
子会社に出向している営業マンの伊沢貴之は、親友の木田が開いた個展の会場で、元恋人の村田浩子と再会する。しかしその直後、伊沢の会社の下請けだった浩子の父の訃報を聞く。その通夜を訪れた伊沢は、浩子から亡き父に代わって、イランに強制送還された従業員メティに未払いの給料を渡してほしいと頼まれる。最初は仕事を理由に断った伊沢だが、思うところあってイランへ向かった。そこで伊沢は、イランの人びとの温情に触れて、ゆったりと流れる旅のなかで自分を見つめなおしてゆくのだった。
オスマン=ムハマドパラスト氏、イランの民族楽器ドタール演奏の第一人者です。風情がかっちょいいです。味があります。「ナビィの恋」の登川誠仁さんみたいです。この音楽と時間にひたって、のんびりしたくなります。
主人公がメティに会えたかどうか、それは私たち観客一人ひとりの心のなかに続いている物語です。
保坂尚輝氏、会社人間の伊沢に対して、「自分の好きなこと=絵を描くこと」を選んで、我が道を行くことの良さも大変さも知っているかっこいい役所。一度は別れた浩子に、伊沢が「やりなおしたい」と電話したところ、「おまえはイランで人恋しくなっただけだ。帰ってきて続けていく自信があるのか」なんて説教しちゃうあたり、お・と・なって感じがぐーです。
あと脇役ですが、寺田農さんとか、大杉漣さんとか、芸達者な方々でかためているのも見逃せません。
(了)