チラシを見て行った映画。雰囲気がなかなか良さそうだったという、映画を見る動機としてはいちばん冒険なもんですが、丁寧なシナリオと日本の原風景ってところが期待どおりで秀作でした。見たい映画だけで終わらなくなると映画もマニアの領域に入ってくるのだなと思いました。ちなみに原作も読んでおりません。最近、漫画もあんまり読まないものですから、ちょっとしたきっかけで映画に行ってます。でもけっこうお薦めです。海老名では5月2日までだけどさ。
高城一砂(かずな)は高校生。母はなく、小さいころに父に棄てられたという思いのほかは優しい叔父さん夫婦の愛情に育まれた、ごく平凡な生活を送っている。あまり笑わない同級生の八重樫葉(よう)の、その笑わないところが気に入っている一砂だが、最近ちょっと貧血気味で奇妙な夢を見る。血塗られた夢に出てくるのが自分の生家だと気がついた一砂は、ある日、学校をさぼって久しぶりに家に行く。そこにはいたこともうろ覚えの姉、千砂(ちずな)がいて、高城の家に伝わる病気のことを知らされる。人の血が欲しくなる、吸血鬼の家系だと言うのだ。一砂は最初受け入れられないが、猛烈な発作に襲われて、同級生をかみ殺す幻さえ見てしまい、信じざるを得なくなる。「何のために、誰のために生きているのか」その問いに答えはあるのだろうか。
個人的には「あまり笑わない」葉がどんどんかわいくなっていくところが好きです。彼女がどうして笑わないのかはわからないのですが、不器用な女の子が不器用なりに、不治の病に冒された一砂に一生懸命自分の思いを伝えようとして、下手すると自分たちだけの殻に閉じこもってしまいかねない二人の姉弟に訴えかける。その距離感が丁寧で押しつけがましくないのが良かったんだろうと思います。
原作がまだ完結していないので映画のラストはオリジナルとなるわけですが、機会があったら読んでみようと思っています(そう言ってた「殺し屋1」は読んだ)。
(了)