ナチ収容所の素敵な生活

ナチ収容所の素敵な生活

ドイツ、1944-1964年
監督:ミハエル=ボーンカンプ
出演:ミハエル=ボーンカンプ、カレル=アンチェコ、ほか
見たところ:Box東中野

 第二次世界大戦もドイツの敗色が濃くなってきた1944年、ナチスは世界に嘘をついた映画を撮らせた。チェコスロバキアの町テレジン(ドイツ名テレージンシュタット)の収容所を舞台にした「ヒトラーがユダヤ人に町を与える」である。その収容所はもともと「見せ物」用の目的を持っていて、ナチス・ドイツが生かしておくほうが好都合だと判断したユダヤ系の作家、画家、音楽家、知識人たちが入れられていて、自分たちの仕事を続けていたばかりか、サッカーの観戦も許されているようなかなり自由な生活を送っていた。けれどもその20年後、同じ町に人の姿はない。

写真でもそうなんですが、戦争を表すのにあえて死体も戦闘シーンも写さないというカメラマンていますね。そんな映画。ここには、「夜と霧」に代表されるような死体も虐げられる人々も全く出てきません。あるのはあの時代に撮られたとはとうてい思えないような平和で退屈でさえある日常の風景ばかり。本当に収容所を写したの? なんて思うような映像です。けれども、その20年後、同じ町を写したフィルムには全く人が住んでない、寒々しい光景が広がっていて、逆にそのことにぞっとさせられる。好みは分かれますが、これもあの時代の狂気を鮮やかに切り取った映画、皮肉なことにナチスはそう思っていなかったのだろうけれど、現在と対比することによって、あの時に何が行われたのかを雄弁に語った映画なのだなと思うのでした。

とかわかったようなことを書いておりますが、実はこの映画、英語のナレーションだけで日本語の字幕なし。2つの映画の違いがわかりにくく、途中で船を漕ぎかけておりました。日本語の字幕かナレーションぐらい入れてくれないと困るんですけど。見せる努力を怠るなよと思いましたね。だからもらったチラシ見てつなげたっす。

(了)

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