日本では公開が珍しいドイツ映画。3時間近くの長丁場だけど、その長さを感じさせない秀作。自由を求めて変装しての脱出、トンネルを掘り始めてからのトラブルや協力者たち、監視される家族、東と西に引き裂かれた恋人たち、潜入、投獄とクライマックスまで丁寧に描かれて、また無駄なシーンが1つもないというのは、すごいことだと思います。途中がだれないんですよ。気がついたら3時間経ってたんですから。もっとドイツ映画見たいぞー。
東ドイツの競泳チャンピオンになったハリー=メルヒャーは、反ソ活動をして4年間も刑務所で暮らしたことのある闘士。親友でエンジニアのマチスの手引きで、東ベルリンから西ベルリンに脱出する。彼には最愛の妹ロッテがいたが、夫と娘を連れて脱出はできない。ハリーは、妹一家を脱出させるため、マチスとその協力者、イタリア系アメリカ人ヴィック、プロシア貴族の末裔フレッドとともに西ベルリンから東ベルリンへ145mのトンネルを掘ることを思いつく。その頃、東ドイツ政府は東西ベルリンの境に鉄条網を設け、それだけでは足りずに強固な壁を築き上げようとしていた。途中で、東西に引き裂かれた恋人ハイナーを待つフリッツィが参加、さらに協力者を加えて総勢10名になった一行は、27人の愛する人々を脱出させるべく、トンネルを掘り続ける。けれど、東ベルリンでは、違法な国外退去を防ぐため、クリューガー大佐を初めとする情報局が動いており、ハリーの妹ロッテはその監視下に、マチスの妻カロラは、そのスパイをさせられていた。
実際に、こういうトンネルは何本も掘られたそうですが、映画のモデルとなったトンネルが最長で、ほかのトンネルは途中で発見されたりと、使われたのは5本くらい。こうした手段で国外に脱出した人々は、何人いるかもわからないそうですが、国境を越えようとして銃殺された人々は200人以上になるとか。
たきがはは遠い昔に読んだ「サイボーグ009」の004のエピソードを思い出しました。「たかが漫画」と言うなかれ。子供心にもあれは印象に残るシーンでして、そういうきっかけも大事なんすよ。きっと。
ラスト近くで、クリューガー大佐がハリーに「わたしは自分の信念に基づいて行動している。君が同じ信念でなかったのは残念だ」みたいな台詞を言うんですが、「KT」とかもそうなんだけど、いつになったら、人間はその間違いに気づくんだろうと思いました。国は決して、等しく国民を守るわけじゃないのにね。
そんな話はともかくとしまして、素直に良い映画です。ラストシーンで、一人で見にきていたらしいサラリーマン風のおじさんが、鼻水すすりあげていたのが印象的でした。
(了)