Stage Twelve「天空の騎士」9

Stage Twelve「天空の騎士」

殺セ。
いやだ!
己ガ力ヲ存分ニ振ルエ。
殺セ。
壊セ。
世界ヲ破壊シツクセ。
いやだいやだ!
武器ヲ取レ。
立チ上ガレ。
殺セ。
壊セ。
ソレガオマエノ本性、オマエノ本心。
違う!
足ガ萎エタグライデ戦エヌカ?
腕ガナイグライデ戦エヌカ?
身体ガ動カネバ戦ワヌカ?
そうだ! 足を傷つけては動けまい! 腕がなければ武器は取れまい!
ダガソレハオマエノ手足デモアル。
オマエハ私、私ハオマエ。
私ガイナケレバ、オマエモコノ世ニアルコトハカナワヌ。
おまえは私、私はおまえ!
殺セ。
いやだ!
壊セ。
いやだ!
一度ナラズ望ンダデアロウ?
望んだことなどない!
オマエガ私ニ会ウノハ二度目、コノ深淵ヲノゾイタデアロウ?
二度と会いたくなんかなかった!
オマエノ兄妹モシタデアロウ?
彼らは私が殺した!
オマエハ私モ殺スノカ?
彼らを傷つけるぐらいなら、おまえを殺す!!
オマエハ私。
私ハオマエ。
オマエガ死ナヌ限リ、私ハ死ナナイ。
ダガ忌々シイノハ天空ノ騎士、竜牙ノふぉーげる。
コノ私ヲ束縛シヨウトハ。
その方がいい! このままおまえを野放しにするぐらいなら、おまえとともに滅んだ方がましだ!
心ノナカデ願ッタコトハナイノカ、コノ力ヲ存分ニ振ルッテミタイト?
あるわけがない!
心ノナカデ望ンデハイナカッタカ、コノ力ヲ出シ尽クシテミタイト?
ない!
イイヤ、オマエハ望ンデイタ。
願ッテイタ。
ソウデナケレバ、ナゼ私ガココニイルノダ?
それは−−−。
イマノオマエハソレヲ否定スルカモシレナイ。
オマエノ兄妹ヲ殺シタノモソノタメナノダカラ。
違う違う!
何ガ違ウト言ウノダ?
恐レルコトハナイ。
オマエハ自由。
オマエヲ止メラレル者ナドホトンドイナイ。
私ハオマエ。
オマエハ私。
私ニ身体ヲ明ケ渡スノダ。
ソシテオマエハユックリ眠ルガイイ。
私ニスベテヲ任セテ、傷ヲ癒スガイイ。
私が眠る?
ソウダ。
オマエハモウ十分、戦ッタ。
疲レタノダロウ?
休ミタイノダロウ?
オマエガソウスルコトヲ誰ガ咎メ得ヨウカ。
だけど、私はレクサールを殺した。この世界でたった1人の兄を殺した! レクサールだけじゃない、アーウィンドも私が殺した。私を犯そうとした名も知らない男、私が意図せずに辱めた男、戦場で向かい合った敵、殺されるために集められた捕虜、ゼテギネア帝国の兵士、みんな、みんな、私が殺したんだ!!
れくさーるトあーうぃんどヲ殺サナケレバ、オマエガ殺サレテイタ。
オマエハ自分ノ身ヲ守ルタメニ殺シタ。
武器ヲ取ッタ以上、兵士デアル以上、戦場デハ常ニ誰カガ殺サレ、誰カガ殺ス。
オマエハ生キ延ビタ、ソノ力ヲモッテ。
そうだ、すべては私の罪。償うべきは私自身。
その私に休めと? その私に傷を癒せと? 私が十分に戦っただと? 疲れただろうだと? 休みたいだろうだと?!
誰が咎めなくても私は私の罪を知っている。それはおまえなどに労ってもらうような類のものじゃない、私が死ぬまで引きずっていくものだ!
ダカラ、ソノ罪モ呑ミ込ンデヤロウトイウノダ。
オマエ自身ト一緒ニナ!!
ああっ?!
「いいえ、あなたは去りなさい!」
アナタハあいーしゃ。
ナゼ私ニダケ去レト言ウ?
私ハぐらんでぃーな自身、力ソノモノダトイウノニ。
「だけど、あなたは自分自身を傷つけているわ。これ以上、グランディーナを傷つけないで。お願い、もう帰って!」
オマエノ兄モ待ッテイルノニ。
レクサールはそんなところにいない。私にはわかる。彼は私を捜している。
でも、二度と会うことはないだろう。私たちの道は、14年前のあの日に別たれてしまったのだから。
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