ここでマフマルバフ映画家族という特集を1ヶ月かけて上映します。その第一弾。「マフマルバフなんて監督聞いたことないわ」なんて方も「カンダハール」の監督と言えばわかるかな。きっかけは「ブラックボード −背負う人−」の予告を見たことでした(ちなみにその時見たのは「ローサのぬくもり」)。これがどうしても見たくなって、その監督のお父さんがこの方。で、特集やってるので通ってみることにしたというわけです。
派手なSFXも、アクションもないし、有名な俳優が出ているわけではない。でもこういう映画があるんだな、と思わせられた映画でした。見終わった後でじわじわ効いてくるタイプの映画。
元警官だと言う中年の男性が監督の自宅を訪ねてきます。監督は17歳の時に警官の銃を盗み損ねて刺してしまったことがあり、この男性がその時の警官でした。彼の提案でか、その時の映画を撮ることになります。オーディションで若き日の監督と警官役の若者が選ばれました。監督役には「人類救済」を夢見る少年、警官役には似たような少年。監督と元警官はそれぞれの役者に演技指導をしていきます。元警官の男性は少年とだんだん親しくなるうちに、映画に出ることで若い日に果たせなかった恋の成就を打ち明けるのですが、その原因となってしまったのは監督に刺されたことで、植木鉢に思いを託そうとしていました。けれども観客は、彼が思いを寄せていた娘が監督の従妹で、警官の気をそらすために1ヶ月間、道や時間を尋ねたことを知ります。そして監督役の少年は、手にしているのが演技用のナイフであることを知っていながら、人を刺すことは人類を救済しないといって一度は演技さえも拒むのでした。彼の手にはナイフを隠すためのパンがありました。やがてリハーサルが始まり、元警官の男性は少女の真実を知ってしまい、その復讐のために、少年に彼女を銃で撃てと言いました。時間を尋ねる少女を挟んで、少年たちが交わしたものは...。
(了)