プロローグ
あるとき
命のつぼみの国に住まわれる
サーラ姫の胸に
ちいさなトゲが刺さった
トゲは姫を苦しめ
サーラ姫は重い病の床についた
あらゆる命のみなもと
サーラ姫の涙がすべて流れおちたとき
命のつぼみの国は枯れ
同時に
あらゆる命あるものたちが
滅び去る運命にあった
雪の中の砦
門番
外のようすは?
偵察兵
異常ない。
門番
ふーっ。こう冷えこんじゃ、見張り台のやつら、身体が凍っちまうぞ。
砦 見張り台
見張り兵
さ、さみーい。
見張り兵
なんて雪だ。ろくに前も見えん。
見張り兵
こんな吹雪は初めてだな。
見張り兵
おーい、交替だ。
見張り兵
た、助かった。
見張り兵
…様子はどうだ?
見張り兵
変わりない。
見張り兵
? ……なにか聞こえたか?
見張り兵
いや…?
見張り兵
気のせい、か…?
見張り兵
タ、タプター!
見張り兵
し、しまった! 雪にまぎれて!
見張り兵
ここは任せて、王に伝令を!
見張り兵
よ、よし!
見張り兵
ディ、ディフェンス・フォーメーションだ!
見張り兵
だ、だめだ! 敵が多すぎる!
見張り兵
うわぁーっ!
砦内
見張り兵
メルヴィル軍の襲撃だ!
兵士
な、なんだって?
見張り兵
みんなを起こしてくれ! おれは王の所へ!
兵士
わ、わかった!
兵士
お、起きろーっ! メルヴィル軍がせめこんできたぞ!
兵士たち
な、なんだって?
砦 マムラン王の部屋
見張り兵
マ、マムラン王! 敵襲です! 無数のタプターが…。
マムラン王
……最後の騎士をここへ。
付添兵
さ、最後の騎士を? し、しかし…。
マムラン王
急ぐのじゃ。
付添兵
はっ!
ベルベル
待って! あなたは砦の守りにまわって。騎士はわたしがよんでくるわ。
マムラン王
危険じゃぞ、ベルベル。
ベルベル
だいじょうぶ、すぐによんでくるから!
マムラン王
ロコ、か…ついにこの砦も見つかった。
ロコ
…妖精ベルベルから聞きましたぞ。10番目の騎士をおよびになられたとか。
マムラン王
うむ。いっこくも早く、勇者を捜しださねば。
ロコ
ひと暴れしてみせますわい。姫より授かった我らが命、姫のために散るとあらば本望。
マムラン王
ロコよ、砦の守り、任せたぞ。
ロコ
はっ!
砦 涙の騎士の部屋
ベルベル
こんな時にまだ寝てるなんて信じられない! 早く、起きなさい!
ガオ
うーん…ムニャムニャ。
ベルベル
マムラン王がおよびよ!
ガオ
ふあ?
ベルベル
じれったいわね、急いで!
砦 マムラン王の部屋
マムラン王
…来たか。
騎士よ、名はなんといったかな?
ガオ
ボクの名前、忘れちゃったの? ひどいや。…ガオ、10番目の青い涙の騎士、ガオだよ。
付添兵
お、王に向かってなんという口のききかた!
マムラン王
よいよい。そうじゃったな…ガオよ、そなたに誉れの剣を授ける。
ガオ
え?
マムラン王
よく聞け、ガオよ。はるか彼方、命のつぼみの国に住まわれるプリンセス・サーラの胸に小さなトゲが刺さった。そのトゲを抜くことができるただ1人の勇者を捜して、この砦より旅立った9人の涙の騎士は、すべてメルヴィル軍に倒された。残る騎士はそなた1人。誉れ高き青い涙の騎士ガオよ、愛をココロに持つ国に旅立つがよい。そして勇者を見つけ出し、かならずやプリンセス・サーラのもとに送りとどけるのじゃ。
ガオ
…そ、そんな大役、ボ、ボクには無理だよ。
マムラン王
ガオよ、ためらう時ではない。メルヴィル軍はすぐそこまで迫っておる。
さあ、誉れの剣を受け取るがよい。
ガオ
……。
マムラン王
プリンセス・サーラのトゲを抜くことができる勇者は、時を渡る金色の船とともにいる。ゴホゴホ…。愛をココロに持つ国への道は、長老ロコに訊ねるがよい。
ベルベル
わたしも行くわ。妖精族の羽には命をよみがえらせる力があるの。わたしは6枚の羽を持ってるから、6回あなたを助けることができるわ。1人じゃ危なっかしくて見てられないもの。
マムラン王
頼んだぞ、ベルベル。
砦内
長老ロコ
マムラン王より誉れの剣を授かったというのは本当か?
ガオ
はい。
ロコ
おまえが行くことになろうとはこのロコ、思ってもみなんだ。まさか、手塩にかけて育てあげた9人の騎士全部を失うとはな…。ガオよ、落ちこぼれのおまえにはサーラ姫についてなにも教えなんだ。今はゆっくり話している時間はない。愛をココロに持つ国へ行け。そこはヒトの国。勇者はそこにいる。じゃが、そこに行くには、すべての世界を自由に行き来できるという旅立ちのカガミが必要じゃ。砦の地下水脈をつたって魔女イメルダの所へ行け。
これは新しい命の水。この砦を建てるときにワシが見つけたもの。これを渡せば、魔女はおまえの願いを聞き入れてくれよう。さあ、ここはそう長くはもたんぞ。
砦 賄い所
下女
騎士さま…こっちです。
下働きの者たちが長い間ためたものです。なにかのお役に立てれば。
ガオ
そ、そんな宝石、受け取れないよ。
下女
少しでも騎士さまのお役に立ちたいのです。
いつかのおり、酔ったロコさまがおっしゃっていました。病に倒れたサーラ姫はたくさんの涙をお流しになられ、残された涙はあと3粒だけとか。それがすべて流れ落ちると、サーラ姫はお亡くなりになられ、あらゆる世界の命あるものすべてが、ともに亡びると。どうか勇者を捜しだし、世界をお救いください。
砦の地下水脈 魔女の洞窟
魔女イメルダ
フォッフォッフォッ。砦の騎士か。フォッフォッ、妖精族も一緒とはこの魔女イメルダになんの用じゃ。
ガオ
マムラン王から騎士の使命を授かったんだ。ここに来れば、愛をココロに持つ国に行けるってロコさまが言われた。
魔女イメルダ
フォッフォッフォッ。ヒト族の国へ行きたがった騎士は、おまえでちょうど10人目じゃ。フォッフォッフォッ、おまえはなにを土産に持ってきたんじゃ?
ガオ
これを…。
魔女イメルダ
おお! これは…あ、新しい命の水!
ヒトの国も、今はもうメルヴィルの部下でいっぱいじゃ。伝説の勇者を乗せるという金色の船もヤツらの手で壊されておるかもしれんのう。そんなところへわざわざ行くのか?
ガオ
はい。
魔女イメルダ
ふむ…。
これが旅立ちのカガミじゃ。魔女族だけが持つ、世界を渡るカガミじゃよ。これをくぐりぬければ向こうは愛をココロに持つ国。さあ、行くがよい。
賢者の玉を手に入れた、あの恐ろしいメルヴィルに、立ち向かえるものがいるとは思えんがのう。最後の騎士が倒れればサーラの最後の望みも消える。哀れなことよ…さて、さっそく大魔女ターマさまに新しい命の水を送らねば。
SFC史上初、生ボーカル「愛のテーマ」に乗せて始まる重厚なオープニング。プレイヤーにはそれ以上の情報は与えられないまま、雪に閉じ込められた砦が敵に襲われて、我らが主人公ガオ登場。ただし、当初はRPG史上他に類を見ない情けない主人公で、おつきの妖精ベルベルではありませんが、叱咤したくなるんですけど、実はガオ=プレイヤーキャラクターではありません。スイッチ入れて、新しいゲームを始めたところ、次の「愛をココロに持つ国」までプレイヤーがすることはAボタン押して話を進めるだけ、戦闘もガオが勝手にこなします。ここで出てくる敵はちゃんと戦闘するようになると意外と強いので要注意。
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