風の国ウィンダモス・火の国ガリンキア
風の城 城門
風の兵
報告! 報告!
風の兵
火の門からもどったみはり兵だ。
風の兵
あのあわてぶり、うわさは本当のようだな。
風の兵
蛮王ガダールはやはりよみがえったのか?
風の兵
王は戦われるおつもりか?
風の城 王の間
風の兵
報告! 報告! 風の国の王テオシス様にもうしあげます。火の国ガリンキアにあやしげなうごき。ガリンキアの王ガダールは要塞の前に砦を建設中。軍がゾクゾクと集結しているもよう!
テオシス王
な、なんと!
ザワック
…火の国の王ガダールが目ざめたといううわさは本当であったか!
テオシス王
おお、ザワック、どうしたらよいのじゃ? 目をさましたガダールはすぐさまこの風の国をせめてくるにちがいない。
ザワック
おちつきください、テオシス王。
テオシス王
城門のまもりは? 見張り台の兵は?
ザワック
それぞれよりすぐりの者が城をかためております。ご安心を。
テオシス王
不安じゃ不安じゃ。
ザワック
王よ。
妖術の賢者メルヴィルのねらいはただひとつ。勇者を命のつぼみの国へたどりつかせないこととか。メルヴィルとかわした約束通り、勇者とやらを火の国へ通さねば、このウィンダモスは安泰とか。
テオシス王
本当じゃな? 本当じゃな、ザワック。
ザワック
このザワック、ウソはもうしませぬ。王よ、勇者になにを言われようと、火の国への門をひらいてはなりませぬぞ。
テオシス王
…ええい! そのいまいましい勇者とやらをつれに行った兵たちはまだもどらぬのか。
風の城
風の兵
風の国の王テオシス様と将軍ザワック様がお待ちだ。こちらにこられい。
風の城 王の間
テオシス王
き、来おったな、ねがいの火をはなった愚か者たちめ! ねがいの火はわざわいの火、火はこのウィンダモスの風のながれにまたがって、ガリンキアに飛び火し、もえない石となって永遠の眠りについていた火の国の王ガダールをふたたび目ざめさせてしまったのじゃぞ!
ガオ
風の国の王、お待ちください。ボクたち、命のつぼみの国へ旅しているんです。フラワランドリアを通りぬけるには、ねがいの火でギリンを倒すしかなかったんです。
テオシス王
ええいうるさい! 命のつぼみの国じゃと? どこにあるかも分からぬそんな世界の果ての国よりも、われらにはこのウィンダモスが大事。
ベルベル
命のつぼみの国のプリンセスが死ねば、この国もなくなってしまうのよ。
テオシス王
…病になられたというサーラ姫のことか?
ガオ
テオシス王、サーラ姫にはあと3つぶの涙しかないんです。それがぜんぶながれおちてしまうまえに、どうしても姫のもとにたどりつかなくては…命のつぼみの国へつづくつぎの扉がどこかにあるはず。ごぞんじありませんか?
バララート
ふん、たぶん火の国ガリンキアあたりじゃろう。テオシス王よ、ワシらを火の国ガリンキアへ案内するのじゃ。
テオシス王
バカな! ガリンキアへつづく火の門が開けば、この国はたちまち千丈となり、たくさんのものが死ぬであろう。サーラ姫を救うためなら、この風の国はどうなってもよいともうすか?
ガオ
……。
テオシス王
…これまでじゃ。この者たちを城からほうり出せ!
ガオ
テオシス王!
テオシス王
ええい、だまれ!
ガチャ
な、なにをする!
バララート
ガチャよ、さからうでない。
ガチャ
なぜ!
バララート
わからぬか? こやつらはメルヴィルの宝石モンスターではないぞ。命のつぼみの国の姫君に会いに行こうというものが、命あるものに手をかけてはならん。
ガチャ
…し、しかし。
ベルベル
バララートの言うとおりよ。
ガチャ
ううっ…。
ザワック
…テオシス王、おそれながら、少々手ぬるいのでは?
テオシス王
て、手ぬるいじゃと?
ザワック
わざわいのもとは、殺してしまうのがとくさくかと。
テオシス王
ゆ、勇者と騎士を殺してしまえというのか。
そ、そのようなおそろしいこと、ワシにはとてもできぬ。
ザワック
…。
風の国ウィンダモス
ガオ
すぐそばに塔と町があるよ。行ってみようよ。
風の町 旗おり通り
町民
ここは風の町。風の国ウィンダモスの城下町だよ。
町民
ウワサでは火の国ガリンキアの王ガダールがよみがえったというが本当かのう。もし本当なら、この国はまた戦の炎の中じゃ。
町民
風の町は旗おりの町。どんな旗でもおりあげることができるんだ。
町民
ガダールがもえない石に変えられたあの戦はそれはすごいもんじゃった。少し長いがワシの話を聞きたいか?
ガオ
どうする? 聞いてみるかい?
(はい)
町民
では話してやるぞい。メルヴィルはこの風の国を征圧するために火の国の王ガダールと手をむすんだんじゃ。ガダールはメルヴィルから炎の体と宝石モンスターの軍隊をあたえられ、今にもこの風の国にせめこもうとしておった。その時じゃ。どこからか赤い鎧をきた戦士たちがあらわれてのう、ガダールと戦い、自分たちの命とひきかえにヤツをもえない石に変えたのじゃ。テオシス王はそのまま一気にメルヴィルと戦うべきじゃった。だが賢者の玉の力をおそれて、メルヴィルに忠誠をちかったのじゃよ。それいらい、テオシス王はおくびょう王とよばれておるのじゃ。
旗売り
風乗りの旗はいらんかね?
旗売り
風見の旗はいらんかね?
旗売り
雨よけの旗はいらんかね?
長老
ワシはこの町の長老じゃ。若いころはうでにおぼえのある旗おりじゃったんじゃがトシをとって、めもゆびもこまかい仕事についてゆけんようになってな。今では若い旗おりに昔ながらの旗のおり方を教えながらのんびりとくらしとるんじゃ。
町民
ん? …なんじゃ? ワシゃ耳がとおくてのお。この町にとおくの声を風のながれに乗せて聞くことができるささやきの旗があると聞いて買いに来たんじゃが、ささやきの旗おりが町のどこにもおらんのじゃ。
町民
ここは戦いの旗おりのおじいさんの家よ。でも戦が始まるというのにおじいさん、とつぜん旗をおるのをやめてしまったの。おじいさんの旗をせなかにさすと、風の兵たちは見事に風をよんだのに、どうしちゃったのかしら?
風の町 戦いの旗おりの家
じいさん
……そのカッコウ、おまえもどこかの騎士じゃな。城の使いに言ったとおりじゃ。戦いの旗はもうおらん! 戦はこりごりじゃ。
アリアッド
王さまはおくびょう者なんかじゃないわ。あらそいをきらう、やさしいお方よ。あらそいを力でかいけつしても、それがまたつぎのあらそいのたねになるでしょう? テオシス王はそれをおそれていらっしゃるのよ。わたし、どんなにおくびょう者と言われても、じっとがまんして戦わないことの方が本当の勇気だと思うわ。
戦いの旗おり
まごのアリアッドがなにか失礼なことを言いませんでしたか? ゆるしてくだされ。気の強い子でのう。あの子にさとされて、ワシも戦いの旗をおるのをやめたんですじゃ。
風の町
町民
火の門? ああ、火の国ガリンキアへつづく門のことだな。南に行けばあるが、だれも通れんぞ。
風の町 酒場
酔客
命のつぼみの国? にいちゃん、ずいぶんのんだなぁ。
マスター
そこのテーブルのじいさん、酒をのむとむかし話ばっかりだ。ほっときな。
酔客
ひっく…あれはどこの国の兵だったんじゃろう。みな赤い鎧をきておった。ひっく…あの戦士たちがこの風の国を救ってくれたんじゃ、ひっく。
酔客
おくびょうな王様をもったおかげで、国中のものがおびえてくらさにゃならん。
酔客
テオシス王は自分の影にさえおびえるおくびょう王。ガダールと戦う勇気なんてありゃしないよ。
風の国ウィンダモス
ガオ
ねぇ、そこから大きな門が見えるかい? あれがきっと火の門だよ。行ってみるかい?
(はい)
ガオ
すぐつくから、ちょっと待ってて。
(いいえ)
ガオ
じゃあ、ほかをさがしてみようか。
風の国ウィンダモス 火の国の門
町民
おれは昔、この門の向こうの火の国ガリンキアに住んでいたんだ。なつかしくて、ときどきここに来るんだ。
町民
ガダールがこの風の国をおそう日も近いのでは…。
風の兵
むむむ、火の国からふく風が、日増しにあつくなっていく。
町民
火の国への門はずっととざされたままだ。炎の結界をとく方法は、テオシス王しか知らないよ。
風の国ウィンダモス
ガオ
勇者、あんな所にほこらが…行ってみる?
(はい)
ガオ
ひょっとすると、導師のほこらかもしれないよ。
(いいえ)
ヨシュア
ガオさん、あれは導師のほこらじゃないでしょうか?
導師のほこら
ガオ
やっぱり導師だ。
導師
…勇者とその仲間たちじゃな。…あれはてたこの風と火の世界までよくぞ無事に旅してきたものじゃ。…じゃが、のんびり旅をしている時間はないぞ。サーラ姫の涙はあと三つぶ。ひとつぶながれおちるたびに、サーラの病は重くなり、空と大地が泣くであろう。…宝箱をあけるがよい。なにかの役に立つはずじゃ。
風の国ウィンダモス
ガオ
! 村だ。あんな所に村があるなんて、だれも教えてくれなかったよ。
風の国ウィンダモス 乳母たちの村
村民
おやおや。こんな山おくまでやってくる方がいらっしゃるとはめずらしい。
村民
このばあさんたちは、みんな王様の乳母だったんじゃ。
乳母
…は? 耳が遠くてのお。…は? そうじゃ、ワシらは、まだ風の国と火の国がひとつの国だったころ、先の王ロメロ様につかえた乳母たちじゃ。…は? そうじゃったそうじゃった。ロメロ様にはふたりの王子様がいらっしゃったの。
乳母
…は? そうじゃったそうじゃった。弟のテオシス様はお母さまによくにた、それはやさしいお方じゃった。
乳母
…は? そうじゃったそうじゃった。テオシス様とは反対に、兄のガダール様はお父さまそっくり、とても野蛮なお方じゃった。
乳母
…は? そうじゃったそうじゃった。テオシス様はガダール様にいじめられてばかりいてな、いつもお母さまのかげで泣いておられた…うんうん、ロメロ様は、そんならんぼうなガダール様をとてもかわいがっていらっしゃった。
乳母
…は? そうじゃったそうじゃった。テオシス様はなにかつらいことやかくしごとがあると、いつも風の城の裏の森にある小さな洞窟に向かって、そっと秘密を告白するくせがおありじゃった。
乳母
…は? そうじゃったそうじゃった。おきさき様が病でおなくなりになり、ロメロ様もあとを追うようにおなくなりになると国はふたつにわかれ、テオシス様が風の国を、ガダール様が火の国をおさめるようになったんじゃ…あれはてた火の国をおしつけられたガダール様はひどく怒り狂われてな、ロメロ様がそのようなゆいごんをのこすはずがないとおっしゃって…。
乳母
…は? またぁ、年よりをからかって。50年前にもうしこまれたら、考えてみたじゃろうに。
風の城 裏の扉
ガオ
カギがかかってるよ。
風の国ウィンダモス 乳母たちの村
乳母
…は? 城の裏の扉にカギがかかっておるとな? そんなはずはないぞな。ふるい扉じゃからな。思いっきりおしてみなされ。
風の城 裏の扉
ガオ
扉をおしてみるね。
うーん、うーん。
風の城 秘密の洞窟
ベルベル
だれか来たわ! かくれて!
テオシス王だわ!
ガオ
しまった。これ以上進めない!
テオシス王
……。
ヨシュア
ガオさん、テオシス王がなにかを話してます。
ガチャ
ちくしょう、聞こえないぜ!
風の町
町民
え? 遠くの声を聞きたい? ならささやきの旗だよ。
長老
ささやきの旗がほしいとな? ささやきの旗はチノネンにしかおれん。じゃがチノネンはとつぜん旗をおるのをやめて町のとなりの塔にとじこもってしまったんじゃ。……ムダとは思うが、あのうでききがまた仕事をする気になればしめたもの。ほれ、これが塔のカギじゃ。
風の国ウィンダモス 塔
ガオ
チノネンさんですか? ささやきの旗がほしいのですが。
チノネン
…帰れ。
ガオ
どうしても必要なんです。
チノネン
どうせまた、つまらぬ話の盗み聞きに使うのだろう。
…なに? テオシスの告白を聞き出すだと?
! そ、その青い衣、おまえは…よかろう。気が変わった。ワシと戦ってかったら、ささやきの旗をくれてやろう。ルビーはいらぬ。
チノネン
…見事だ、青い涙の騎士よ。うでだめしをするまでもなかったな。
ガオ
ボクがだれか知ってるの? あなたはいったい?
チノネン
長い間待ちつづけたかいがあったぞ。サーラ姫の涙の化身と出会えるとはな。さあ、うけとるがいい。
う、ううっ…。
ベルベル
な、なに?
ヨシュア
チノネンさんの体からなにか出てきます!
チノネン
こ、ここはいったい…。
チャン
すまなかったな。おまえの体をかりておったのじゃ。いま、町に送りとどけてやろう。
ワシは赤い血の戦士の将軍チャン。
ガオ
赤い血の戦士? まさか。
チャン
そのとおり。サーラ姫の血から生まれた戦士だ。おまえの仲間だ。
ガオ
なんてことだ。は、初めまして。青い涙の騎士ガオです。
チャン
ワシは青い涙の王マムランよりも、ひと足先に軍をひきいて命のつぼみの国を旅立った。風の国は命のつぼみの国へつづく大事な国。サーラ姫の命をうけ、この国をメルヴィルからまもるためにやって来たのだ。そしてメルヴィルと手をむすんだガダールの軍と戦ったのじゃ。
わすれもせん。ワシはメルヴィルのきたない妖術にひっかかり、わが赤い血の戦士たちをすべて赤い花に変えられてしまい、たったひとりになってしまったのだ。
しかし、ガダールを倒さねば、風の国までもメルヴィルの思うまま。ワシはガダールに一騎打ちをいどんだ。
火の国ガリンキア
チャン
なんと! 導きの剣をはじき返すとは!
導きの剣は、ガダールのようさいの外にはじき飛ばされ、地面につきささった。
ガダール
かくごはいいか、赤ブタめ!
チャン
ぬおおおお!
ガダール
血まよったか!
チャン
ぐふっ!
ガダール
ぐわあああっっ! きさま!
チャン
わが体はサーラ姫の血でできておる。おまえの体の炎も、サーラ姫のねがいの前には無力じゃわい!
ガダール
お、おのれ、チャン!
チャン
ワシがいっしょに死んでやるんじゃ。ありがたく思え。
ガダールの体はもえない石となり、ガダールは永遠の眠りについた。
ガダール
ぐあああっ! いいか! かならず、かならずよみがえってやる! ぐああああ…。
風の国ウィンダモス 塔
チャン
ガダールの力は封じた。だがメルヴィルの妖術をおそれたテオシスは武器をすて、だれも火の門を通さぬことをじょうけんにメルヴィルから中立の約束を取りつけたのだ。
ガオ
ガダールをもえない石に変えた戦士というのはあなただったのですか。…ボクたちが、ねがいの火を使ったばっかりに。
チャン
案ずるな。とどめをささぬかぎり、いつかガダールはよみがえったであろう。…なぁに、ヤツの息の根を止めればすむこと。ともにゆこうぞ。
バララート
ふむ、サーラの戦士の将軍とは、たのもしいヤツが仲間になったわい。これで安心じゃ。
これ、ヨシュア。
ヨシュア
は、はい。
バララート
ワシゃつかれた。弟子になるとき、なんでもすると言ったな。ワシはこれよりバララートの玉となる。おまえが持つのじゃ。
ヨシュア
は、はい。
バララート
ていねいにあつかうんじゃぞ。
ベルベル
ほんとに、わがままな魔法使いね。
チャン
勇者よ、ワシらを導いてくだされ。
ガオ
さあ、洞窟へもどろう。テオシス王の告白を聞くんだ。
風の町
町民
ようやくささやきの旗が買えましたじゃ。……うんうん、よお聞こえる。
チノネン
ささやきの旗はいらんかね。
長老
あんたのおかげで、うでのいい旗おりを失わずにすんだわい。
町民
ささやきの旗が手に入ってよかったわね。
風の城 秘密の洞窟
ガオ
勇者よ、ささやきの旗を使うよ。
テオシス王
戦いはにくしみを生み、にくしみがまた戦いを生む。どんなにおくびょう者と笑われようと、けっして火の門を開ける方法をあかすまい…。だが、このココロにしまったひみつをどうすればよいのじゃ? 風よ、おまえだけは聞いてくれ。炎の国への門のまえに立ち、とっぷうの旗をかかげよ。さすれば門は開くであろう。
チャン
ちっ! とっぷうの旗とは! だれも秘密を遠くにはかくせぬものじゃな。王の部屋にかざられているのがとっぷうの旗。
勇者よ、風の城へ向かって下され!
風の城
チャン
涙の騎士よ、剣を取れ! 城の兵は、テオシスの知らぬまにすべて宝石モンスターにすりかえられておる!
ガオ
さあ、中へ!
風の城 王の間
ザワック
まいこんだハチどもが、ブンブンとうるさいわい! あの時、ひとおもいに殺しておけばそれですんだものを。…テオシスから目をはなすなと、メルヴィル様より命じられたが、まさか命のつぼみの国へ行く、勇者どもがアミにかかるとはな…おまえたちの命を手みやげに、デッド・エンドの城にむかえられるチャンスじゃわい。
ガオ
デッド・エンドの城?
ザワック
フフ、メルヴィル様が住まわれる、世界の果ての城よ。
ガチャ
ガオ、ゆだんするな!
チャン
おお剣よ! われとともに歩め!
ザワック
お、おくびょう者の騎士どもと聞いておったが…こ、これほどの使い手たちとは…ぐあっ。
風の城 テオシス王の部屋
テオシス王
ぐうぐう…。
ガオ
……戦う勇気も戦わない勇気も、命を大切に思うおなじ気持ちから生まれたもの。ボクたち、あなたをおくびょう王とは思いません、どうかこの風の国ウィンダモスが、ふたたび戦いの炎にやかれることがないよう、ボクたちの戦いを見守っていて下さい。
テオシス王
ぐうぐう…。
ベルベル
ガオ、テオシス王がどこかへ。
ガオ
ついて行ってみるね。
風の城 地下牢
ベルベル
テオシス王がだれかと話してるわ。
テオシス王
…父上。
ロメロ
…テオシスか。
テオシス王
父上、わたしはあなたから王位をうばい、このような場所にとじこめました。さぞ、おうらみでしょう?
ロメロ
…息子よ、けっして自分をせめるでない。ワシの野蛮なココロがガダールを生み、母のやさしいココロがおまえをそだてた。ワシがあのままガダールに国をゆずれば、かならずやおまえや国の者たちを苦しめ、たくさんの命をうばったであろう。…父はかんしゃしておるぞ。
テオシス王
…父上。
ロメロ
兄ガダールを火の国に追いやったこと、くいてはならん。おまえのはんだん、まちがいではなかった。
テオシス王
しかし、そのことが兄とわたしの間にみぞを生み、またあらそいのたねとなりました。
ロメロ
テオシスよ、もはやこの先は、なるようにしかならぬ。…命のつぼみの国に住まわれるサーラ姫がすべての命のみなもとなら、なぜあらそいあうようなふたつのココロをおつくりになられたのか。
テオシス王
…父上、命のつぼみの国の姫君とは、どんなお方なのでしょう?
風の国ウィンダモス 火の国の門
風の兵
そ、その旗はとっぷうの旗! なぜきさまが! ま、まさかザワック様が…おのれ! ここを通すわけにはいかん!
町民
あわわ…炎の結界がとかれた…ガ、ガダールがせめこんでくるぞ!
火の国ガリンキア ノブリン族の住処
ノブリン族
ノブリン? お客かノブリン?
チャン
おや? ガダールのようさいにつづく洞窟かと思えば、ノブリン族の住処じゃったか。
ガオ
ノブリン族?
チャン
ガリンキアの火山の民じゃ。火山のそばに、ほらあなをほってくらしとるんじゃ。
ノブリン族
ガダールのようさいに行きたいのかノブリン? この下をぬければ、行けるノブリン。
ノブリン族
ガダールのようさい? 右の道ノブリン。
ノブリン族
ガダールのようさいは右の道ノブリン。ちゃんとそう言ったノブリン。
ノブリン族
道にまよったノブリン。
ノブリン族(隠し通路の手前にいる)
ワシの宝もの見つけたかノブリン。たいしたものノブリン。
火の国ガリンキア 魔女の塔
マジョール
ヒョッヒョッ! めずらしい客ぞい。サーラの宮殿に旅するとかいう、おろかなヤツらじゃ。
魔女たち
ヒョッヒョッ!
マジョーラ
ガダールのようさいはとてつもなく広い。
マジョーリ
その上、待ちうけているモンスターもこれまでにない強さじゃ。
マジョール
どうじゃ、この新しい命の根を魔女の村ムーン・トランジェルダに住む大魔女ターマ様にとどけてくれるなら、これから先、いつでもHPとMPをかいふくしてやろう。
マジョーリ
どうじゃ?
ガオ
あんなこと言ってるよ。どうする?
(はい)
マジョール
そうか、ではたのむぞ。
マジョーラ
それは、この世界にたったひとつしかないきちょうなものじゃ。
マジョーリ
おとすでないぞ。
マジョール
では、おまえたちのHPとMPをかいふくしてやろう。
(いいえ)
マジョール
ガダールをあなどるとひどいめにあうぞ。
マジョーラ
ワシらの言うことを聞いた方がいいぞい。
(頼みを聞いた後で話しかけると)
マジョーリ
マジョーラが盗賊ムッチャに旅立ちのカガミを盗まれなければ、おまえたちごときにたのみごとなど、しなかったものを。
マジョーラ
マジョーリがさっさと新しい命の根を見つけておれば、こんな火の地に取りのこされなかったものを。
火の国ガリンキア 城門前
チャン
カ、カシュタ! カシュタではないか!
カシュタ
将軍…この副将カシュタ、将軍がサーラ姫からさずかった剣をまもり、ずっとここでお待ちしておりました。
チャン
おお! あの時、ガダールにはじき返された導きの剣か!
ガオ
サーラ姫からさずかった剣ならボクも持ってるよ。
チャン
誉れの剣じゃな。
ガオよ、よく聞くがいい。サーラ姫は命のつぼみの国を旅立つ騎士たちに三本の剣をあたえられた。青い涙の騎士に誉れの剣、赤い鎧の戦士たちに導きの剣、そしてもう一本の剣がそろったとき、三本のサーラの剣はひとつとなり、ふしぎな力をひめた剣に成長するという。
さあ、だれか導きの剣をぬくがよい。剣をぬいたものが、亡霊となったワシにかわって、サーラ姫をあずかるもの。
勇者よ、剣をぬくにふさわしい者をえらんでくだされ。それは涙の騎士ガオかな?
(はい)
ガオ
それじゃ、剣をぬいてみるね。
チャン
ガオではないようじゃ。ではガチャかな?
(いいえ)
チャン
ではヨシュアかな?
(はい)
ヨシュア
ボ、ボク、鍛冶屋なんですけど…。
チャン
ヨシュアでもないようじゃ。勇者よ、のこるはガチャひとり。
ガチャ
おれじゃないと思うが…勇者のご命令なら。
チャン
おお! ガ、ガチャがサーラ姫にえらばれたぞ!
ガチャ
な、なにかのまちがいだ。おれはこんなりっぱな剣にふさわしい戦士じゃない。
チャン
ガチャよ、戦士にためらいはきんもつじゃ。おのれを信じ、導きの剣を信じろ。おまえはサーラ姫にえらばれたのじゃ。
ガチャ
将軍…。
…導きの剣。
カシュタ
よかった…。
チャン
カ、カシュタ…。
カシュタ
……おわかれです、将軍。
チャン
カシュタよ、よくぞ導きの剣をまもった。ワシもすでに亡霊の身。すぐにおまえたちのそばに行くぞ。
火の国ガリンキア ガダールの間
ガダール
ガッガッガ。ようやく来たか。
チャン
ひさしぶりじゃな、ガダール。
ガダール
ねがいの火をはなったおろか者どもめ。おかげでワシはよみがえった。かんしゃしなくてはんらんな。ガッガッガ。おくびょう者のテオシスはさぞやうろたえたことだろう。
ベルベル
なぜ、そんなにまでテオシス王をくるしめるの?
ガダール
だまれ、妖精族め! 草も木もはえぬ火の世界でくらすくるしみが、おまえに分かるというのか?
ベルベル
…。
ガダール
テオシスを殺して、なんとしてもゆたかな風の国を手に入れるのだ。
チャン
ガダールよ、妖術使いメルヴィルにたましいまでも売りわたしたか?
ガダール
命のつぼみの国へ向かうきさまたちをここで殺せば、ガリンキアとウィンダモスはワシのもの。それが賢者メルヴィルとの約束だ。
チャン
ガダールよ、おまえの体をつつむ炎はよくぶかの炎かな。
ガダール
いちいちシャクにさわるヤツめ! 二度とさまよい出ぬよう、たましいまでももやしつくしてくれるわ!
チャン
のぞむところよ! おお剣よ! われとともに進め!
ガダール
ガッ、ガッ…ガッ、一度ならず、二度までも…ガッ!
メルヴィル
…なぜじゃ、なぜ命のつぼみの国へ行く? サーラのトゲをぬいてどうしようというのじゃ?
ベルベル
メ、メルヴィルよ! この声は!
ガオ
メ! メ、メルヴィル!? いったいどこに?
チャン
声じゃ! 声だけが世界をこえてワシらのココロの中に! な、なんとういう力じゃ!
メルヴィル
この世界を見よ。サーラは美しい生き物もみにくい生き物もいっしょにこの世につくりだす。ワシはそれががまんならんのじゃ、けがれのない美しい世界をつくりたいというワシのねがいが分からぬか? みにくいものがいない世界をつくろうとは思わぬか? すべてを最初から始めるのじゃ、サーラが死ねば、それができるのじゃぞ。…愛をココロに持つ国からやってきた勇者よ、おまえにもこのメルヴィルの声が届いているはず。勇者よ、もしおまえがこれ以上旅をつづけるなら、このメルヴィル、もはやようしゃせぬぞ。わすれるでないぞ、勇者よ…。
チャン
メルヴィルの声にまどわされてはなりませんぞ、勇者ひかり。サーラ姫が死す時、すべての世界がほろびる。あなたもあなたの愛するものも命あるものすべてじゃ。くれぐれも言うが、勇者よ、これはゲームではないのだ。
火の国ガリンキア 城門前
ガチャ
チャン将軍、おれはくやしいです。導きの剣をさずかったというのに、まるで使いこなせず、剣の本当の力を引き出せません。どうかじざいにあつかえるよう、あなたのわざをお教え下さい。
チャン
……カシュタ、すまぬな。ワシはまだそこにゆけぬようじゃ。戦士がワシを必要としておる。
ガチャよ、よく言った。もしおまえの父上が生きておられたら、戦士にふさわしいその言葉によろこんだだろう。…うむ。ワシがまことサーラの剣にふさわしい使い手にきたえてやろう。
ガチャ
ありがとうございます!
ガオ、しばらく勇者とはなれる。かならず追いつく。それまで勇者をたのむ。
ガオ
…わかったよ。心ぼそいけど、はやくりっぱな戦士になってもどってきてくれ。
ガチャ
勇者よ、剣にふさわしい戦士となって、いつか追いつく日まで。
ガオ
雨だ。
ヨシュア
え?
チャン
なんということだ。この雨はプリンセス・サーラの涙。サーラ姫の涙があと二つぶになってしもうた。勇者よ、のんびりしてはおれんぞ。のこされた涙がぜんぶながれおちた時が、サーラ姫の命がおわる時。命のつぼみの国へ急ぐのじゃ。
ガチャ、ワシらも急ぐぞ。
ガチャ
はい!
バララート
まったく、玉のなかにいるのも楽じゃないわい…ガチャは行ってしもうたか。……チャンが導きの剣を若者にゆずったようにワシも自分の力を若いものにゆずる時が来たのかもしれんの。
これ、ヨシュアよ。
ヨシュア
は、はい!
バララート
できそこないの弟子だと思っていたが、なかなか見どころがあるはたらきじゃった。おまえにワシの魔法のすべてをさずける。
ヨシュア
ボ、ボクにバララートの魔法を?
バララート
そうじゃ。これをうけよ!
ヨシュア
マ、マントだ。こ、このトンカチは?
バララート
魔法のトンカチじゃ。鍛冶屋だったおまえにふさわしいじゃろう。
ヨシュア
…バ、バララート。
バララート
バカモン! 魔法使いが泣いてどうする! 以後、バララートの弟子魔法使いヨシュアと名乗ることをゆるす。
ベルベル
バララートはどうするの?
バララート
ワシはガラの町にもどるわい。あの町にもう一度、賢者の町をつくり直そうかいの。
勇者よ、火は知恵より生まれる。火の国のみなもとは知恵の国。命のつぼみの国へいたる旅は、ここより知恵の国トランジェルダへとつづくぞ。
ヨシュア
……。
バララート
さらばじゃ、ヨシュアよ。
ガオ
みんな行ってしまった。
ヨシュア
ボクたちだけです。
ベルベル
なに心ぼそそうなかおをしてるのよ。勇者もいっしょよ!
ヨシュア
ガオさん、導きの剣がささっていた場所が光ってます。
ベルベル
きっとつぎの世界への入口よ。
ガオ
行こう!
フラワランドリアより広くなった世界、と思っていたら、フラワランドリアより台詞少なかった。展開はけっこうめまぐるしいです。特にチャン将軍が加入してから、テンポアップ、ウィンダモス、ガリンキアと一気に攻略が進みます。バララートが玉になったり、最後はヨシュアに魔法を譲ったり、世代交代もあり。しかしこの世界、色気がない。女性キャラクターといったら、ベルベルと乳母たちぐらいしかいない。そこらへんもこのゲームの人気のない理由ですかね。けっこう重要なのが、バララートがガチャに宝石モンスターと命ある者の違いを説く台詞。つまり、ガオたちが戦っている宝石モンスターは、メルヴィルの妖術によって宝石(ガラ産)に仮初めの命が吹き込まれただけのものなんですね。RPGでモンスターとの戦闘は避けて通れぬものだと思いますが、こういう設定をしたのは後にも先にも「Down the World」のみ。「命」というものへのこだわりを感じます。
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