逃走
霧都 繁華街「とある酒場」
キャロル
何でもいいわ。
冷たいものを頂戴。
ルシアン
俺には、上等の蒸留酒を。
キャロル
マスター、
一つ聞いていいかしら?
マスター
はい、何でしょう。
キャロル
確かこの街は、デュレンシティと
呼ばれていたわよね。
マスター
ええ。
キャロル
でも、この街の人はここを
ヘルダー・シティと呼んでいたわ。
なぜ?
マスター
お客さん、デュレン様の事は
何もご存じないんで……?
キャロル
ご存じないって、
デュレンの身に何かあったの?
教えて、マスター!
マスター
ええ……実は……
デュレン様は杜人と通じて何か
良からぬ事を企んでるってんで
叛逆罪で治安当局に
逮捕されてしまったのです。
その後、デュレン様のかわりに、
ヘルダー様が統治するように
なったのです。
それで皆、この街の事を
ヘルダーシティと……
キャロル
うそでしょ?
タイタス
要はデュレンの野郎は、
この町の奴等を杜人どもに
売り飛ばそうとしたって事よ。
キャロル
誰よ、あなた。
タイタス
誰だっていいだろう。ええ?
まあ杜人ってのも、得体の知れねぇ
奴等だしな。最近、皇都でも
杜人狩りが行われたっつーし。
杜人とつるんでやがるデュレンは
危険だって事だろうな。
ルシアン
実際、何かやってたのか。
タイタス
さあてなあ。
そりゃ、わからんさ。
キャロル
それで、デュレン剣帝は
今どこに?
タイタス
へへへっ、それが判りゃ、
俺は苦労はしねぇや。早えとこ、
奴さんを見つけたいンだがな。
ルシアン
どういう事だ。
タイタス
逃げやがったのよ。
連行途中にな。
キャロル
逃げた?
タイタス
おう。皇都の精鋭による
護衛兵を倒してな。
ありゃあ、やっぱりタダモン
じゃねぇよ。
キャロル
なんてこと……
ルシアン
噂は本当だったのか。
で、あんたはどうして
デュレンを探してるんだ。
タイタス
へへへッ、おめえらと同じよ。
キャロル
え?
タイタス
なんたって、生きて捕まえりゃ
500万。
首だけでも250万だからなあ。
こんな法外な掛け金、
久しぶりだぜ。
ルシアン
賞金稼ぎか。
キャロル
ちょ、ちょっと!!
ふざけないでよ!
タイタス
へへ、ムキになるなって。
どうせおめえらも賞金目当て
なんだろ?
キャロル
デュレン剣帝の首を取るなんて…
許さないわ!
タイタス
へへへ。そう言われても、
こりゃ早いもの勝ちだからなぁ。
ルシアン
で、ヘルダーとは
どういう奴なんだ?
タイタス
相当に、血生臭い事がお好き
な様でな。今日もこれから杜人の
処刑を行われる。
ルシアン
処刑?
処刑ってのは、
つまりどういう事だ。
タイタス
適当な杜人をとっつかまえて、
コロシアムでブチ殺すのさ。
それを見て、観客は
口笛を吹くって寸法だ。
キャロル
そんな、だって霧都は……杜人の
人達と互いに共存していて……。
タイタス
そりゃあ、先月までの話だ。
キャロル
ちょ、ちょっと!
どこ行くの!?
ルシアン
……コロシアム。
タイタス
好きだなあ、おめえも。
キャロル
……ルシアン!!
(酒場を出ていくルシアン。それを追うキャロル)
タイタス
……なんだい、ありゃあ。
マスター
お客様は、行かれないんで?
タイタス
杜人いじめにゃ、興味ねぇな。
マスター
…………
タイタス
だが、あの兄ちゃんは……
ちょいと気になる。
それは、剣帝デュレンが謀叛の罪に
問われ、その地位を剥奪されてから
僅か二週間後の出来事でした
宰相ヴラドの命とは申せ
諸侯への覚えも少なく
これといった経歴も持たぬヘルダーが
剣帝補佐官という、事実上の最高権限を
持つ重職に着任した事は
極めて異例であったと言えましょう
しかし、人々は彼の言葉に深く酔い痴れ
そして罪人の処刑に歓声を上げ、
恍惚と喝采をするのでありました
霧の都は、もはや熱病にうかされた
悪魔の都市となりつつあったのです
血塗れヘルダー…
その、恐るべき魂と共に
杜人という言葉に、以前出会った
不思議な存在を思い出したルシアンは
コロシアムへと向かいました。
そこで彼らの見たものは
無残にも処刑台へと並ばされた
杜人達の姿であったのです
ルシアンとキャロルの目の前で
ヘルダーはゆうるりと
冷ややかに聴衆へ
語りかけるのでした
「賢明なる市民諸君’」…と
霧都 都営コロシアム
ヘルダー
賢明なる市民諸君。
今こそ我の名において、
都の栄光を汚す者への
粛清を行う。
国家の発展を担い、そして
来たるべき、輝かしい工業社会の
未来を享受しうる市民諸君。
われら賢くも才知に恵まれた
市民の中に、劣等種族の混在を
許す訳にはゆかぬ。
今こそ災いの種は
……摘み取られるのだ。
(ヘルダー、退場する)
スラップ
死刑執行を開始する!
ルシアン
異議あり!
異議がある。
……異議があるぞ!
タイタス
おいおい、兄ちゃん。
こんなことしたって、
なんの得にもなりゃしねーぞ。
どうだ、兄ちゃん。
俺の相棒にならねーか?
共にデュレンを追う者どうし、
仲良く協力して、報償金は
山分けって事でどうだ。
なっ、だからこんなことに
関わらないで、早くデュレンを
探しに行こうぜ。
キャロル
ちょっと、なんなのよ。
あたしたちはデュレンを……。
タイタス
捕まえるんだろう?
スラップ
何者だ! 捕らえろ!
タイタス
あ〜あ、やっぱりもめ事に
巻き込まれちまったか。
ついてねえーなあ。
Battle 5 処刑場(霧都)
スラップ
今から杜人の処刑を
始めちゃうよ。
2!
1!!
0!!!
Hinrichten!!
ルシアン
間一髪てとこか……
遅れてすまん。
スラップ
ぬう……
ひとまず退散しろ。
ルシアン
今のうちに杜人を助けよう。
キャロル
早く逃げないと援軍が来るわ。
ルシアン
わかっている。
タイタス
よし、こっちの地下水道から
逃げようぜ。
霧都 王立水道局「地下水道」
キャロル
はあはあ……もう、だめ!
これ以上走れないわ。
タイタス
こんな所で休んでたら、すぐに
追っ手がやってくるぞって……。
って言ってる間にやって
きやがったぜ。
タイタス
水路がじゃまだなあ……
っと、
そのスイッチで水門の開け閉めが
出来るみてーだぜ。
そうすりゃ先に進めんだろ。
Battle 6 地下水道1(霧都)
ルシアン
よし!
ここまでくれば!
ここから脱出だ!
ルシアン
とりあえずの危機は脱したな。
杜人
私のためにこんな事になってしまって、申し訳ありません。
ルシアン
いや……あなた一人しか助けられ
なかった。……すまない。
杜人
いいえ、それは仕方のない事。
あなた方のせいではありません。
キャロル
これから森へ帰られるのですか?
杜人
そうです。私は森でなければ
生きてはいけません。
皆様もよければ、
森へご案内いたします。
ルシアン
森か……。
キャロル
そうね、森なら
追っ手もまきやすいし……。
タイタス
そうだな、霧都では俺達はもう
賞金首だから戻れねぇしな。
そうするか。
それは、剣帝デュレンが謀叛の罪に
杜人を救出したルシアン一行は
彼の指し示すままに街を抜け
複雑に絡み合う樹木の迷宮へと
身を潜ませるのでした
遠からぬうちに、早馬に乗った伝令が
エドゥアルド島の隅々に至るまで
指名手配の賞金首について
伝え回る事でしょう
ついに彼らは
法に追われる身となったのです
一方、杜人の処刑は中断されたものの、
むせ返りそうな血糊の匂いが
今なお立ち込めるコロシアムでは
思いもよらぬ新たなスケープゴウトの登場に
観客達が騒然と沸いておりました
狩りが、はじまるのです
折りしも暴都の剣帝
ゲオルグ率いる尖鋭部隊が
近隣の森に滞在しておりました
霧都からの遣いを受けたゲオルグは
森の探索を開始します
やがて時を要せずして
組織的な索敵部隊は、着実に
その包囲網を狭めつつありました
そして…
ルシアン
俺達は以前に、あなたと同じ姿を
した杜人に会った事がある。
ブルー・オイスターというのは、
あなたの仲間ではないだろうか?
杜人
ええ、あなた達の話は聞いた事が
あります。
今回の事も彼女に話したら、
あなた方に感謝するはずです。
キャロル
今後は二度と彼らに捕まらない
よう気をつけて下さい。
杜人
はい、そうします。
それでは、私はここで
森に戻る事といたします。
ルシアン
さてと、これからどうする。
キャロル
デュレンを探すのよ!
タイタス
そうだ!
デュレンを探すんだ!
キャロル
何よ、あなたはデュレンを
探さなくてもいいのよ。
もうっ。私達はデュレンに
助けを求めにいくんですからね!
タイタス
へっ、自分達だけで賞金を
一人占めしようたって
そうは問屋が卸さねえぜ!
キャロル
もう、違うってば。
ルシアン
しっ! 静かに!
……誰かいるぞ。
ガーディアン
霧都から回ってきた手配書の
三人組はお前達だな。
タイタス
思った通り、俺達の首には
賞金がかけられているようだぜ。
キャロル
この人達……もしかして……。
待って!
ルシアン
下がってろ!
怪我をするぞ。
Battle 7 ムーンフラワーズ
ゲオルグ
そこまでだ!
双方とも武器を収めろ!
ルシアン
何だと?
タイタス
勝負に水をさすのはやめてもらおう。
いいところなんだぜ。
ゲオルグ
これ以上の戦いを続けるまでもなく、
勝負は君達の勝ちだ。
それとも、最後のひとりまで
血祭りに上げねば満足が行かぬ
という手合いか……?
ならば、部下達に代わって
私が相手になろう。
罪状は知らぬがその首に賞金が
かけられた罪人だ。
手加減はせんぞ……!
キャロル
待って! ゲオルグ!
ゲオルグでしょう?
ルシアン
邪魔をするな、キャロル!
ゲオルグ
君は、まさかキャロル?
なぜ君がこんな所に?
ルシアン
キャロル、知り合いなのか?
キャロル
え……ええ……私の友達よ。
そうよね? ゲオルグ。
ルシアン
友達って……
この男と、お前が?
ゲオルグ
と、友達? いや、私は……。
キャロル
あら何よ、冷たいわね。
違うっていうの?
ゲオルグ
……いや、つまり……。
ルシアン
どっちなんだよ。
ゲオルグ
キャロルの言う通りだ。友達…
い、いや…古い知り合いだよ。
タイタス
おいルシアン、一体どうなってるん
だ。その野郎は何者なんだ?
いや、そんな事あどうでもいい。
やるのか、やめるのか?
どっちなんだ!
ルシアン
自分で考えてくれ。
俺にも良く分からないんだ。
タイタス
けっ、これじゃあ勝った気に
なれやしないぜ。
お前はこれからどうするつもりなんだ?
キャロルの言うようにあの男と一緒に彩都へ行くか?
ルシアン
あの男が、もともと彩都へ行く
つもりだったってだけだろ?
俺達がついていく理由があるか。
タイタス
まあ、あのゲオルグとかって
野郎の事はともかくだな。
彩都へ行くってのは
悪くないアイデアだな。
ルシアン
なぜそう思う?
タイタス
あそこはお尋ね者には
格好の隠れ家さ。
この森の中を逃げ回ってるよりは、
デュレンの手がかりを得るチャンスだって増える。
ルシアン
話は終わったのか?
キャロル
ええ。それでこれから先の
事なんだけど……。
タイタス
あいつと一緒に彩都へ行こう、
……だろ?
キャロル
このままあてもなく逃げて
いる訳には行かないわ。
彩都へ行くのも
ひとつの選択だと私は思うの。
ルシアン、あなたはどう思う?
ルシアン
気に入る選択じゃないな。
あいつと一緒に彩都へ
行くってのは……。
キャロル
ルシアン……
ルシアン
だが、行こう。ここでわがまま
いっても始まらないからな。
タイタス
よおし、決まりだ。
ゲオルグ
それでは、早々に出発する事にしよう。
[
オープニング |
鳥 |
面影 |
盗賊 |
逃走 |
故郷 |
邂逅 |
ヘビィ・D |
記憶 |
虚塔 |
狂貴 |
散華 |
残光 |
エンディング ]